【プロが伝授】トルクレンチの選び方とは?代表的な種類や注意点なども解説

トルクレンチとは、ボルトやナット、ネジなどの締め付け作業で使われる精密機器のことです。自動車整備や工場での生産現場などさまざまな現場で使われているため、正確かつ効率的に作業を進めるには正しい選び方を知っておくことが重要です。

本記事では、創業約40年の産機レンタル会社が、トルクレンチの選び方から代表的な種類、使用時の注意点などをまとめました。「作業に適したトルクレンチを選びたい」「効率的に作業を進めたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、定番のプレセット形から検査用まで、幅広いトルクレンチを取り揃えています。全国の在庫から作業にぴったりの製品を提案しますので、以下のボタンからお気軽にお見積りをご依頼ください。

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トルクレンチの選び方

ここで、トルクレンチを選ぶポイントを以下の3つ解説します。

トルクレンチを選ぶ3つのポイント

では、詳しく見ていきましょう。

1.使用目的に適している

最初に「どのような目的で使うのか」を明確にしましょう。トルクレンチは締め付けや検査などさまざまな目的で使われるため、作業によって相性の良い種類が変わります。

また、使用する環境や作業者なども現場によって異なるため、まずは以下の4つを確認しておくことが重要です。

【選ぶ前に確認すべき4つのポイント】

  1. どのような目的で使用するのか?(締め付け作業・検査など)
  2. どのような現場で使用するか?(電気工事・水道管工事など)
  3. 連続作業がどれくらいあるか?
  4. 作業者の経験値はどれくらいか?

トルクレンチを用いる際は正確さが求められるため、作業者が初心者の場合は、軽量で力が入りやすくトルク管理が簡単なタイプがおすすめです。

目的に合うトルクレンチを選んでも、製品によっては初心者には使いこなせないケースがあります。そのため、目的や現場の状況とあわせて作業者の経験値も確認しておくとより安心です。

2.トルク値の測定範囲を確認する

次に、トルクレンチの測定範囲が、設定したいトルク値の70%以内であるようにしましょう。トルクレンチには、測定できるトルク値の範囲が機種ごとに決められています。

例えば、トルク値を「80N・m」に設定する場合は、「104N・m」くらいまで測定できる製品が適しています。

トルク値に余裕を持たせて選ぶと、トルクレンチへの負担が軽減され長期間安定して使用できます。結果的に、正確な測定値で作業できるため作業品質の面でも安心です。

レントでは、以下のページでボルトの締め付けトルク表をまとめているので、トルク値の参考にご覧ください。

>>ボルトの締め付けトルク表

3.ボルト(ネジ)とヘッドの形状・サイズが合っている

トルクレンチで正確な締め付けをするには、使用するボルトやネジの形状やサイズに合った製品を選ぶ必要があります。トルクレンチとボルト(ネジ)がぴったり合わないと、トルク値を正確に測定できません。

そのようなときは、「ヘッド交換式」のトルクレンチを選ぶと、ヘッドを交換すればさまざまな形状のボルトやナットに対応できるため、柔軟に対応できます。

ただし、「ヘッド交換式のトルクレンチさえあれば、どのようなボルト(ネジ)でも対応できる」と安易に考えるのはおすすめできません。同じトルク値で連続して締め付け作業をおこなう際には、作業中にトルク値が変わりにくい単能形を選ぶと、思わぬミスを防げるのでより安心です。

このように、使用目的や作業内容を明確にし、特性に最も適したトルクレンチを選ぶことが重要です。

トルクレンチとは

ここで、トルクレンチについてあらためて解説します。トルクレンチとは、ボルトやネジなどの締め付け作業で「トルク値(今どのくらいの力で締め付けているか)」を正確に測定するための精密機器です。

トルク値とは、トルクレンチを使用して締め付ける際に加わる力をあらわしており、かける力の大きさ(ニュートン)と、回転の中心から力をかける点までの距離(メートル)によって計算されます。

【トルク値の計算式】

  • トルク (T) = 力 (F) × 距離 (L)
    ※単位は「Nm(ニュートン・メートル)」であらわす

トルクレンチの種類は大きく分けて5つあり、それぞれの違いは以下の通りです。

トルクレンチの種類

確認方法 概要 種類
シグナル式 設定したトルク値に達すると、「カチッ」という音や振動で通知
  1. プレセット形
  2. 単能形
直読式 目盛に表示されたトルク値を、目視で確認
  1. プレート形
  2. ダイヤル形
  3. デジタル形

自動車整備や工場での生産現場など、正確な締め付け作業が発生する場面で広く使われています。では、次章にて種類ごとの特徴を見ていきましょう。

【シグナル式】トルクレンチの代表的な種類

ここで、「シグナル式」のトルクレンチを以下の2種類紹介します。

種類 概要
プレセット形
  • 音や振動でトルク値を確認する
  • トルク値の変更可能
単能形
  • 音や振動でトルク値を確認する
  • 本体に目盛がなく、トルク値の変更には専用の工具が必要

では、ひとつずつ順番に説明します。

1.プレセット形

プレセット形

プリセット形は、最も広く使われている定番タイプです。小さなネジから大きなボルトまで、さまざまな締め付け作業に対応できる汎用性の高さが特徴です。

設定したトルク値に達すると「カチッ」という音と共に手に振動が伝わり、目盛りを見なくても締め付け完了を確認できます。そのため、連続作業が多い現場でも効率よく作業を進められるのがメリットです。

また、トルク値は作業者が変更できるため、異なるトルク値が必要な作業にも柔軟に対応できます。

2.単能形

単能形

トルク値の変更に専用工具が必要なタイプとして、単能形があります。使用中にトルク値が変わる心配がなく、同じ力で繰り返し締め付ける作業現場に適しています。

メーカーや販売店であらかじめトルク値を設定し、出荷する場合もあります。

【直読式】トルクレンチの代表的な種類

主に検査や測定作業で使用される「直読式トルクレンチ」は、目盛りを直接見ながらトルク値を確認できるタイプです。ここでは以下の3種類を紹介します。

種類 概要
プレート形 目盛りと針でトルク値が表示される
ダイヤル形 ダイヤルの目盛りでトルク値を確認する
デジタル形 測定時のトルク値がデジタル表示される

それぞれの特徴を見ていきましょう。

1.プレート形

プレート形

プレート形は、本体に取り付けられた目盛りを目視で読み取るタイプです。シンプルな構造のため壊れにくく、価格も比較的安価のため、検査用として導入しやすい利点があります。

ただし、作業しながら正確に目盛りを読み取るには、ある程度の経験が必要です。

2.ダイヤル形

ダイヤル形

ダ締め付けの際に針が動いてトルク値を示すものをイヤル形といいます。目盛りを見ながら徐々に力を加えられるため、細かい調整が可能です。

3.デジタル形

デジタル形

デジタル形は、トルク値がデジタル表示されるタイプです。数値を一目で確認できるので、経験値にかかわらず誰でも簡単に正確なトルク値を把握可能です。

また、作業履歴を自動で保存できる機能を搭載した機種もあり、品質管理が重要な現場での作業効率化に役立ちます。ただ、高機能がゆえに、プレート形やダイヤル形と比べると価格は高めです。

トルクレンチを使うときの注意点

精密な測定工具であるトルクレンチは、適切な取り扱いと定期的なメンテナンスが欠かせません。精度を維持するために、以下の3つのポイントを押さえましょう。

トルクレンチ使用時の3つの注意点

では、1つずつ詳しく説明します。

1.決められている使用方法を守る

トルクレンチは精密機器のため、決められた使用方法を守らないと正確な測定ができません。使用時に気をつけるべき点は以下のとおりです。

【取り扱いのポイント】

  • 決められた場所を持って使用する
  • 勢いをつけて締め付けない
  • 緩めるときに使用しない
  • 衝撃・打撃を与えない

トルクレンチは精密機器のため、落としたり強い衝撃を与えたりすることは厳禁です。ハンマーのように叩いたり、てこの原理で無理な力をかけたりすることは避け、丁寧な取り扱いを心がけることで、長く正確な測定ができます。

また、締め付け用のトルクレンチは、逆回転(緩める方向)での使用は故障の原因となります。ボルトやネジを緩める際は、通常のレンチやスパナを使用するようにしましょう。

2.適切な方法で保管する

トルクレンチの性能を長く維持するためには、正しい方法で保管する必要があります。以下の3つのポイントを守りましょう。

【保管のポイント】

  • 使用後はトルク値を最小値に戻す
  • 高温多湿を避けて保管する
  • 水気やチリ、ゴミなどの異物混入を防止する

作業終了後は、必ずトルク値を最小値(ゼロ)に戻します。スプリングのへたりを防ぎ、精度低下を防ぐための重要なひと手間です。水気やチリなどの異物混入を防止するためには、専用ケースに入れて保管することで防げます。

また、保管の際は、高温多湿の場所は避けることも重要です。適切な環境で保管できれば、長期間安定した性能を維持できます。

3.定期的に点検(校正)をおこなう

トルクレンチは、定期的に校正をおこなわないと精度を損ないます。正確な締め付け作業をおこなうには、定期的な校正が欠かせません。

一般的な目安としては、1年に1回の点検が推奨されています。ただし、使用頻度や作業内容によっては、より短い間隔での点検が必要なケースもあります。

なお、レントの調査では「1年以上点検を行っていないトルクレンチの約50%が不適合の状態だった」という結果が出ています。数値にズレが生じると、十分な締め付けができず事故の原因にもつながるため、工具に合わせた適切な校正をおこないましょう。

メンテナンスが重要なトルクレンチはレンタルがおすすめ

トルクレンチを使用するなら、レンタルがおすすめです。前述のとおり、精密機器であるトルクレンチで正確な測定値を得るためには、適切な維持管理が欠かせません。

維持・管理の手間を考えると、必要な時に校正済みの機器を手配できるレンタルサービスの利用がおすすめです。レンタルサービスでは、出荷時に校正が完了しているため、すぐに正確な作業を始められます。

産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、多様なトルクレンチの種類やサイズを取り揃えており、用途に合った最適な機種が提供可能です。

例えば、通常のプリセット形やデジタル形のほか、以下のような専用機種も幅広くラインナップしています。

さらに、一定期間使用したトルクレンチの点検(校正)サービスにも対応しています。全国発送や校正業者が希少な1500N・m以上の機種も柔軟に対応可能です。

「トルクレンチの維持管理にかかる手間を最小限に抑えたい」とお考えの方は、以下のボタンからお気軽に見積もりを依頼ください。

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なお、トルクレンチをレンタルで選ぶポイントについては以下の記事にまとめています。レンタル会社を選ぶ基準などを紹介していますので、併せて参考にしてください。

>>トルクレンチをレンタルで選ぶ基準は?ポイントやおすすめ商品も紹介

【シグナル式】レンタルにおすすめのトルクレンチ3選

ここからは、シグナル式の代表的なトルクレンチを3つ紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.締付用プレセット形トルクレンチ

締付用プレセット形トルクレンチ

※画像は代表商品のものです。

項目 詳細
トルク:調整範囲(N・m) 0.5~1.5、 40~280、500~2100 など
トルク:1目盛(N・m) 0.025、2、20 など
適用ネジ(普通鋼) M3、M20、M36 など
適用ネジ(ハイテン) M2.5、M16、M30 など
質量(Kg) 0.12、1.9、20 など
精度 (%)
※レンタル出荷時
±5、±3

プリセット形トルクレンチは、最も一般的に使用されているタイプです。トルク能力範囲内であればトルク値を簡単に変更できます。

設定したトルク値に達すると、シグナル音で締め付け完了を知らせてくれるため、目盛りを見る必要がなく効率的に作業を進められます。汎用性が高く、小さなネジから大きなボルトまで、さまざまな作業に対応可能です。

締付用プレセット形トルクレンチの詳細を見る

2.締付用単能形トルクレンチ

締付用単能形トルクレンチ

※画像は代表商品のものです。

項目 詳細
トルク:調整範囲(N・m) 5~25、30~140、60~420 など
質量(Kg) 0.25、0.7、3.1 など
精度 (%)
※レンタル出荷時
±5、±3

連続作業には、トルク値を固定するタイプの単能形トルクレンチが役立ちます。トルク値の調整に専用工具が必要なため、一度設定したトルク値は使用中に変更される心配がありません。安心して同じ力での連続作業がおこなえます。

設定できるトルク調整範囲は5~420まであり、現場のニーズに合わせて選べます。ソケットのレンタルや販売も対応できるので、まとめて準備したいときにもおすすめです。

締付用単能形トルクレンチの詳細を見る

3.プレセット形ヘッド交換式トルクレンチ

プレセット形ヘッド交換式トルクレンチ

※画像は代表商品のものです。

項目 詳細
トルク:調整範囲(N・m) 0.4~2、20~100、300~1,200 など
トルク:1目盛(N・m) 0.02、1、10 など
適用ネジ(普通鋼) M3、M12、 (M33) など
適用ネジ(ハイテン) M2.5、M10、(M27) など
質量(Kg) 0.13、0.52、8.5 など
精度 (%)
※レンタル出荷時
±5、±3

ヘッド交換式トルクレンチは、1本で複数の作業に対応できる多機能タイプです。スパナ、リングスパナ、ラチェット、ヘックスヘッドなど、作業内容に応じてさまざまな形状のボルトやナットに対応できます。

一般的なプリセット形と同様に、設定したトルク値に達すると、トグルが作動してシグナル音が鳴り、締め付け完了を知らせます。また、専用工具がなくても簡単にトルク値を変更可能です。

プレセット形ヘッド交換式トルクレンチの詳細を見る

【直読式】レンタルにおすすめのトルクレンチ3選

ここからは、シグナル式の代表的なトルクレンチを3つ紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.検査用プレート形トルクレンチ

検査用プレート形トルクレンチ

型式 SF70CN F700N
トルク調整範囲:最小~最大 10~70cN・m 100~700N・m
トルク調整範囲:1目盛 2cN・m 10N・m
適用ねじ(参考):普通鋼 M2.5、M3 (M27)
適用ねじ(参考):ハイテン (M2.2)M2.5 M20
最大トルク時の手力:P(N) 5.9 677
質量 (kg) 0.05 6
精度 (%)

※レンタル出荷時

±5 ±3

※掲載は代表機種であり、納品される機械とは異なる場合がございます。

目盛を目視で確認しながら検査をおこなえるタイプのプレート形トルクレンチは、シンプルな構造が特徴です。摩擦部分が少なく、耐久性が高い設計のため、検査用として最適です。

検査用プレート形トルクレンチの詳細を見る

2.検査用ダイヤル形トルクレンチ

検査用ダイヤル形トルクレンチ

※画像は代表商品のものです。

項目 詳細
トルク:調整範囲(N・m) 0.3~3、20~200、200~2100 など
トルク:1目盛(N・m) 0.05、2、20 など
質量(Kg) 0.4、1、12.8 など
精度 (%)
※レンタル出荷時
±5、±3

※掲載は代表機種であり、納品される機械とは異なる場合がございます。

ダイヤル形トルクレンチは、アナログ時計のような円形の目盛りでトルク値を確認できるため、目盛りが見やすく、直感的に値を読み取れやすいタイプです。ダイヤル目盛は自由に回転できるため、設定トルクに指針を合わせて締め付けをスタートし、”0″になったら完了というような使い方も可能です。

設定できるトルク調整範囲は、0.3から2100まで幅広く用意があるため、小さなネジから大型ボルトまで、必要に応じてさまざまな現場のニーズに対応できます。

検査用ダイヤル形トルクレンチの詳細を見る

3.締付・検査用トルクレンチ(デジタル表示)

締付・検査用トルクレンチ(デジタル表示)

    • DPW型:ブザー・LED・バイブレーションの3つの感覚で伝える
  • HTWC型:バーグラフ目盛とLCD表示、ブザー音とバイブレーションで耳と手で伝える
  • GDE型(デジラチェ メモルク):計測モード・プレセットモード・合否判定モードの3つのモード切り替えが可能
項目 詳細
型式 DPW50 HTWC-50Ⅱ GED060-R3-Z HTWC-100Ⅱ
トルク調整範囲 (N・m) 10~50 10~50 12~60 20~100
最少読取 (N・m) 0.01 0.01 0.01 0.1
質量 (kg) 0.52※1 0.34※1 0.42 0.42※1
精度 (%)※2 ±5 ±5 ±5 ±3
メモリ機能 (件) 6,000 6,000 200 6,000
インターフェイス USB1.1準拠・

USB-Bミニ

RS232C準拠・

USBコネクター

RS232C準拠・

USBコネクター

※掲載は代表機種であり、納品される機械とは異なる場合がございます。

※質量は交換ヘッドを除いた重さです。

測定時のトルク値がデジタル表示されるデジタル形トルクレンチは、用途に合わせて3種類のラインナップから選べます。液晶画面に測定時のトルク値がデジタル表示されるため、リアルタイムに締め付け状態を把握可能です。

また、締付結果を自動で保存してくれるため、作業履歴をデータで管理しやすく、品質管理や進捗管理・作業分析など、あらゆる業務の効率化を図れます。

締付・検査用トルクレンチ(デジタル表示)の詳細を見る

目的に合ったトルクレンチを選ぼう

トルクレンチには、確認方式や用途によってさまざまな種類があります。作業内容や現場の状況に応じて最適なタイプを選ぶことで、効率的で安全な作業が可能です。

また、トルクレンチは精密機器のため、適切な取り扱いやメンテナンスが欠かせません。使用後の保管方法や定期的な校正など、基本的なケアを心がけることで、長期間安定した性能を維持できます。

メンテナンスの手間を考えると、レンタルサービスの活用がおすすめです。

産業・建設機器のレンタル会社「レント」では、豊富な種類のトルクレンチを取り扱っています。出荷前に都度校正をおこなっているため、すぐに使用可能です。

また、お手持ちのトルクレンチの校正サービスを日本全国にて受け付けています。1500N・m以上の大型機種の校正にも対応可能ですので、お気軽にレントにご相談ください。

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