トルクレンチの使い方|トルク設定から締め付け手順・保管方法まで解説

「トルクレンチを使うことになったけれど、設定手順や正しい締め方がいまいちわからない」と、不安に感じたことはありませんか。トルクレンチは、正しい設定方法や手順を知らないまま使うと、締め付け不足や締めすぎによるトラブルにつながりかねません。

本記事では、代表的なタイプであるプレセット形を中心に、トルク値の設定方法から締め付けの手順、使用時の注意点、保管・校正のポイントまでをまとめています。安全で確実な作業をするためにも、ぜひご一読ください。

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トルクレンチを使う前に確認したいこと

トルクレンチは精密な測定工具のため、正しく使うには基本的な知識と事前の準備が必要です。ここでは、以下の3つを順番に説明します。

1つずつ見ていきましょう。

1.トルクレンチの仕組みと役割

トルクレンチは、ボルトを指定のトルク値で締めるための精密工具です。手の感覚だけで締め付け作業をすると力加減にばらつきが出やすく、ボルトの緩みや部品の破損といったトラブルにつながります。これを防ぐのが、トルクレンチの役割です。

トルクレンチの代表格であるプレセット形は、内部にバネ(スプリング)が組み込まれています。

▼プレセット形トルクレンチ

トルク値を設定するとバネが圧縮され、締め付けの力がその値に達した瞬間に内部機構が切り替わり、「カチッ」という音と手応えで知らせる仕組みです。

「トルク」とは、ボルトを回すときにかかる回転力の大きさのことで、次の計算式で表せます。

【トルク値の計算式】
トルク(T)= 力(F)× 距離(L)

力が同じでも、中心から遠い位置ほどトルクは大きくなります。長いスパナほど軽い力でボルトを回せるのは、距離(L)が大きいためです。

なお、トルクレンチには複数の種類があります。種類の違いや選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。

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2.規定トルク値とトルク表の読み方

トルクレンチで締め付ける前に、対象のボルトに応じた「規定トルク値」を確認しましょう。確認の方法は2つあります。

  1. 設計仕様書・マニュアルに記載されている規定値を使う方法
  2. トルク表を参照する方法

トルク表とは、ボルトのサイズや強度区分ごとに締め付けトルクをまとめた一覧表で、工具メーカーなどが公開しています。

【トルク表の読み方】

  • ボルト頭の刻印から「強度区分(ボルトの硬さ・強さ)」を確認し、対応する表を選ぶ
  • 使用する「ボルトのサイズ(ボルト径)」を探す
  • 強度区分とボルトサイズが交差するマスの数値を読み取る(N・m)

レントでもボルトの締め付けトルク表を掲載していますので、参考にしてください。

ここで注意したいのは、トルク表によっては記載されている数値が「推奨締付トルク」か「最大許容トルク(上限値)」かで異なる場合があることです。数値の意味を確認せずにそのまま使うと、締めすぎや締め不足につながるおそれがあるため、現場のルールや設計図の指示とあわせて確認する必要があります。

3.プレセット形トルクレンチの設定手順

プレセット形を使う場合は、作業前にトルク値の設定が必要です。以下の手順を参考に設定してください。

【トルク値の設定手順】※プレセット形の場合

  1. ロック解除する
    →グリップのロックを解除し、回せる状態にする(機種によりスライド式やネジ式がある)
  2. トルク値を設定する
    →グリップを回して目盛りを目標値に合わせる
  3. ロックを再度固定する

トルク値を合わせるための目盛りは2種類あります。大きな数値を示す「主目盛」は本体側に、細かい数値を示す「副目盛」はグリップ(回転する部分)側にあり、グリップを回すと副目盛が動いて値が変わる仕組みです。

まずは主目盛で、大きな単位(例:10N・m刻み)でおおまかに合わせ、次に副目盛で細かい単位(例:1N・m刻み)で微調整します。

「84N・m」に設定したい場合の手順】

  1. 主目盛を80に合わせる
  2. 副目盛を4に合わせる

→トルク値の設定が「80+4=84N・m」になる

設定が完了したら、ロックが確実に固定されていることを確認してから作業に入ります。

トルクレンチの正しい使い方

トルクレンチを使った締め付けは、以下のステップでおこないましょう。

順に解説します。

1.仮締め後、サイズの合ったソケットを差し込む

締め付け作業は、まずボルトを別の工具や手で仮締めした状態から始めます。仮締めの後、指定トルク値に設定したトルクレンチに、ボルトに合ったサイズのソケットを差し込みます。

▼ソケットを差し込むイメージ

ソケットとは、トルクレンチの先に取り付けてボルトやナットにかぶせる筒状の部品のことです。

ボルト・ナットとソケットのサイズが合っていないと、締め付ける力が正しく伝わりません。ボルトの頭をなめてしまったり、斜めに力がかかって破損するリスクもあるため、サイズが合っていることを確認してから差し込みます。

ソケットを差し込んだら、緩みがなくロックされていることも確認して次のステップへ進みます。

2.力点線の位置を握る

次に、トルクレンチのグリップにある「力点線(中央マーク)」を中心に握ってください。握る位置がずれると実際のトルクが設定値からずれてしまうためです。

力点線より先端側を握ると締めすぎ(オーバートルク)に、グリップエンド側を握ると締め付け不足(アンダートルク)になります。力点線を中心に握るよう意識しましょう。

3.一定のスピードで締め付け「カチッ」と鳴ったら手を止める

ボルトを回すときは、グリップに対して直角(90度)の方向に、一定のスピードで力を加えていきます。急いで一気に締めると、勢いで締めすぎる「オーバートルク」になるおそれがあるため注意しましょう。

プレセット形の場合、設定したトルク値に達すると「カチッ」という音と手に伝わる手応え(クリック感)で知らせます。

この合図が1回出たら、そこで手を止めてください。念のためともう一度締め直してしまうと、設定値を超えてしまいます。

なお、デジタル形のトルクレンチには、LEDの光やブザー音で知らせるタイプもあります。

4.【補足】トルクレンチを使うときの注意点

トルクレンチで正確な締め付けをするために、以下の注意点を押さえておきましょう。

注意点 理由
仮締めまでは通常のレンチや手を使い、本締めの最終段階のみで使用する トルクレンチは精密工具のため、仮締めから使うと使用回数が増え、内部機構の摩耗や精度低下を早める
ボルトを緩める方向に使用しない 締め付けトルクが不明なボルトを緩めると、工具の容量を超える力がかかり、内部機構の損傷や精度低下につながるおそれがある
トルクレンチの持ち手(グリップ)部分をパイプやアダプタで延長しない テコの原理で設定以上の力がかかり、設定トルクと実際のトルクがずれる原因になる
電気設備のボルトの場合、通電中に触らない 感電やショート(短絡)事故の危険があるため、必ず電源を切ってから作業をする

基本的な安全ルールを守ることが、事故防止につながります。

以上が、トルクレンチを使った締め付け作業の基本的な流れです。ここからは、トルクレンチの種類ごとの特徴と使い分けを紹介します。

代表的なトルクレンチの種類と使い分け

トルクレンチは大きく分けて、設定値に達したことを音や手応えで知らせる「シグナル式」と、目盛りや画面でトルク値を読み取る「直読式」があります。

ここでは、代表的な5種類の特徴と用途を見ていきましょう。

1つずつ紹介します。

1.【シグナル式】プレセット形

【主な用途】
一般設備工事などの幅広い現場・自動車やバイク整備

プレセット形は、あらかじめトルク値を設定しておき、その値に達すると「カチッ」という音と手応えで知らせるタイプです。トルクレンチのなかで最も広く普及しており、本記事で紹介している基本的な使い方は、主にこのプレセット形を前提にしています。

目盛りを見続ける必要がないため、本締め作業を効率よく進めたい現場に向いています。小ねじから大径ボルトまで幅広い締め付け作業に対応可能です。

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2.【シグナル式】単能形

【主な用途】
フレアナット(空調配管の継ぎ目を接続する専用のナット)の締め付けなど、同一規格のボルトを連続して締める現場

トルク値があらかじめ固定されているタイプを、単能形と言います。プレセット形との違いは、使用中にトルク値を変更できない点です。変更するには専用の工具が必要なため、うっかり値がずれてしまう心配がありません。同じトルク値でくり返し締め付ける作業に向いています。

締付用単能形トルクレンチの詳細を見る

3.【直読式】プレート形

【主な用途】
ボルトの締め付けトルク検査や製品の品質確認などの測定用途

プレート形は、針の指す目盛りで、「今どのくらいのトルクがかかっているか」をリアルタイムで確認できます。本締め作業というより、トルク値を目で確認しながら丁寧に作業したい場合や、検査・測定の用途に適切です。

構造がシンプルなぶんメンテナンスがしやすい一方、目盛りを正面から読む必要があり、作業する姿勢によっては見づらい場合があります。

検査用プレート形トルクレンチの詳細を見る

4.【直読式】ダイヤル形

【主な用途】
精度の高い測定が必要な検査や測定、トルク値の確認作業

時計のような円形の目盛りでトルク値を読み取るタイプがダイヤル形です。プレート形より目盛りが見やすく、針の動きを確認しながらの作業や、細かい測定・検査に向いています。

通常とは逆に、目標値から0に向かって針を動かす「カウントダウン方式」の使い方が可能です。設定値を覚えなくても、針が0に来たら締め付け完了と判断できるため、初心者でも視覚的にわかりやすい方法です。

ただし、プレート形と比べると重量があり、長時間の作業では腕が疲れやすい特徴もあります。

検査用ダイヤル形トルクレンチの詳細を見る

5.【直読式】デジタル形

【主な用途】
重機・電気設備など、細かい品質管理や詳細なデータ記録が必要な現場

デジタル形は、測定したトルク値がデジタルの数字で表示されるため、目盛りの読み取り誤差がないのがメリットです。正確な値が一目でわかるため、精度が求められる現場に適しています。

機種によっては、ブザーやLED、振動で規定トルクへの到達を知らせる機能もあります。さらに、締め付け結果を自動保存できるタイプもあり、品質記録が必要な現場で便利です。

トルクレンチ(締付・検査兼用)の詳細を見る

トルクレンチを長く正確に使うための保管・メンテナンス方法

トルクレンチを長く正確に使うために、押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

1つずつ見ていきましょう。

1.使用後はトルク値を最小に戻す

作業が終わったら、トルク目盛りを調整範囲の最小値に戻しましょう。設定値のまま保管すると内部のバネに負荷がかかり続け、精度が下がる原因になります。

誤差が広がると、「設定どおりに締めたはずなのに緩んでいた」といったトラブルにつながりかねません。

なお、機種によっては最小値よりさらに下まで目盛りを動かせますが、能力範囲を超えて動かすと内部機構が噛み込んで故障する場合があるため注意しましょう。

2.専用ケースに入れて高温多湿・振動を避けて保管する

トルクレンチは専用ケースに収納し、直射日光・高温多湿・振動の多い場所を避けて保管してください。

熱や湿気、衝撃が加わると内部のバネが傷み、正しい力で締められなくなります。また、水気や油、ホコリが内部に入ると、サビや部品の固着の原因になります。

ほかによくある失敗が、工具箱のなかでほかの重い工具と一緒に保管してしまい、本体やグリップが変形するケースです。

保管場所に気をつけるだけで精度を長く保てるので、購入時やレンタル時に付属しているケースを活用しましょう。

3.定期的に校正(精度確認)をおこなう

トルクレンチは、定期的に校正(精度確認)をおこなうことも重要です。長く使っていると内部の部品が少しずつ劣化し、設定どおりのトルク値で締められなくなるからです。

レントの社内調査として、1年以上校正をおこなっていないトルクレンチを検査したところ、約50%が不適合の状態だったという事例があります。対象台数や判定基準は調査条件によって異なりますが、あらためて、定期的な校正の重要性がわかるデータです。

不適合の状態のまま放置すると、締め付け不良のリスクが高まり、設備トラブルや品質上の指摘につながる可能性があります。そのため目安は1年に1回、業務内容によってはさらにこまめな実施をおすすめします。

レントのトルクレンチ校正サービスは、最少1.5N・mから最大2100N・mクラスまで、幅広い範囲の校正が可能です。校正に出して手持ちの機器が不足している場合、レンタル機が使えますので、校正期間中の作業に支障をきたす恐れがありません。詳細は以下のページをご覧ください。
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トルクレンチを正しく使って精度の高い締め付け作業をしよう

トルクレンチの基本的な使い方は以下のとおりです。

  1. 仮締め後、サイズの合ったソケットを差し込む
  2. 力点線の位置を握る
  3. 一定のスピードで締め付け「カチッ」と鳴ったら手を止める

トルクレンチを使う際は、トルク値の設定、正しい締め付け手順、使用後の保管・校正まで、一連の流れを押さえることが重要です。特に、定期的な校正を怠ると精度が落ちたまま気づかず作業を続けてしまうリスクがあるため、管理体制もあわせて整えておきましょう。

校正やメンテナンスの手間を省きたい場合は、レンタルの活用が便利です。レンタルなら、はじめから校正済みの機器を利用できるほか、校正に出している期間の代替機としても活用できます。

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