建設現場や土木工事では、予期せぬ湧水や溜まり水が発生し、工期の遅延や安全上のリスクにつながることが少なくありません。こうした水のトラブルを解決したいときに活躍するのが、水中ポンプによる排水作業です。
しかし、水中ポンプにはさまざまな種類があり、水量、水質、必要な揚程などに適した機種を選定しなければ、期待通りの排水能力を発揮できず、かえって作業を停滞させてしまう恐れがあります。
そこで本記事では、創業約40年の産機レンタル会社が、現場に合った水中ポンプの選び方を解説します。おすすめの水中ポンプも紹介していますので、製品選びに迷っている方はご覧ください。
産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、水中ポンプのレンタルをおこなっています。豊富な在庫から最適な機種を提案しますので、以下のボタンよりお気軽に見積もりを依頼ください。
水中ポンプの選び方5ステップ
水中ポンプを選ぶ際は、以下5つのステップに沿って選びます。
このステップどおりに考えると、現場に合った機種をスムーズに絞り込めます。作業の内容や現場の状況を確認しながら、各ステップの詳細を見ていきましょう。
【ステップ1】どのような現場状況で使用するか?
まずはどのような環境で水中ポンプを使用するか、現場状況を確認します。水中ポンプの電源は100Vと200Vの2種類です。どちらを選ぶべきかは現場の状況や排水する水の状態によって、以下のように異なります。
では、それぞれについて解説します。
1.泥や固形物を含まない水の場合
【100Vの水中ポンプが活用される現場の例】
- 土木工事中に地面から地下水が湧き出る場合
- 大雨の後に建設現場に水が溜まっているとき
地下水や雨水などの水を排出する作業では、ほとんどの場合、家庭用コンセントで使える100V(単相)タイプの水中ポンプで対応できます。
100Vのポンプは、一般的な家庭用コンセントで使えるため取り扱いが簡単なのが特徴です。また、レンタルでも機種の選択肢が豊富です。
2.固形物を含んだり排水量が多かったりする場合
【200Vの水中ポンプが活用される現場の例】
- ダムやトンネル工事の排水など排出量が多い場合
- 工場での揚水・排水
100Vで処理が追いつかない場合や、大量の水を排出したい場合には、より強力な200Vの水中ポンプが適しています。
200V(三相)は業務用の電源が必要なタイプです。100Vに比べて出力が高く排水スピードも速いため、作業効率が上がります。
現場に泥水や固形物が含まれていたら、ポンプの詰まりや排水が追いつかないといった事態を避けるためにも、最初から200Vを選ぶと安心です。
【よくある疑問】必要な電源が確保できない場合はどうする?
工事現場によっては、必要な電源が確保できないこともあります。その場合の対策は以下の2つです。
- エンジン式の水中ポンプ(エンジンポンプ)を使う
- 発電機を使う
エンジン式ポンプは、動力にエンジンを利用した水中ポンプです。電気を使わずに動くため、山間部や仮設現場など電源のない場所でも使用できます。
また、発電機を使うのも1つの方法です。現場のインフラがどの程度整備されているかによって、適切な機器を準備しましょう。おすすめの発電機については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
【ステップ2】排水させる水の状態はどちらか?
次に確認したいのが取り扱う水の状態です。水に泥やゴミが含まれていると、排水できなかったり水中ポンプの故障につながったりする恐れがあるので、注意が必要です。
ここでは、水の状態に応じた水中ポンプの選び方を下記の2パターンに分けて解説します。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
1.雨水や地下水、池やプールの水などの場合
排出する水が、プールの水のように比較的きれいな場合や、雨水や地下水の場合は、100Vの水中ポンプを選べば問題ありません。水中に固形物を含むことがほとんどなく、排水に支障をきたすリスクが低いためです。
なお、具体的な製品例は以下のとおりです。
また、水が浅い場所ではベビースイーパー、バキュームレーターなどの床面に密着して吸い取れるタイプを選ぶと、排水処理がスムーズにおこなえます。
2.泥水や汚水などの場合
泥水や汚水など、異物を含んだ水を排出するには専用のポンプが必要です。通常の水中ポンプを無理に使うと、泥やゴミが詰まり故障の原因になってしまうので、固形物を含んでいても使える製品を使用しましょう。
水質ごとに適したポンプは、以下のように異なります。
水質 | 製品例 | 補足 |
泥水やスライム状など、濁った水や粘性のある水 | 「網」や「かご」を使って泥水などをろ過しながら使う手もあるが、200Vの水中ポンプを使うほうが一般的 | |
ゴミや砂利混じりの水 | 攪拌(かくはん)機能で、泥などを排出できる | |
汚水 | 汚水に含まれる繊維(トイレットペーパーなど)をカッターで切れる |
泥水など粘度が高い水は、パワーのある強力型ポンプや、攪拌機能付きのポンプを選ぶと安心です。ゴミや繊維を多く含む場合も、それぞれ専用の製品を使うと詰まりなどのトラブルを防げます。
なお、吸い取った泥水やゴミを遠くへ移動する必要がある場合には、出力の高い200Vの水中ポンプを使うと効率良く作業がおこなえます。
【ステップ3】水を移動させる距離はどれくらいか?
次に、吸い取った水をどこまで移動させるのかを確認しましょう。水中のポンプは単に水を吸い上げるだけでなく、排出先までの揚程と横の距離の合計値に応じて、必要な性能が変わります。
移動距離を確認する際に注意したいのが、「揚程(高さ)」と「横の移動距離」の関係です。例えば、移動距離が同じ9mでも、「横1m・揚程8m」と「横8m・揚程1m」では、ポンプに求められる出力が異なります。
水中ポンプを使うシーンは「地下から地上に排水したい」「地上にある水を遠くの排水溝まで流したい」など、さまざまです。どの方向に、どれだけ水を動かすのかを明確にしておきましょう。
なお、具体的な揚程の計算方法については、次の「ステップ4」で解説します。
【ステップ4】水中ポンプに必要な揚程は何メートル(m)か?
横の移動距離とあわせて水中ポンプを選ぶ際に確認したいのが「揚程」です。
「どのくらいの揚程が必要かわからない」というときは、以下の計算式を使って考えてみましょう。
▼作業に適した揚程の目安を把握する計算式
横の移動距離×0.1+揚程<水中ポンプの全揚程×0.8
例えば、横に10m、水を高さ5mまで持ち上げたい場合は、「10×0.1+5=6m」が必要な揚程です。計算した数値が、水中ポンプの仕様表に記載された全揚程の80%以内に収まっていれば、十分に排水できると判断できます。
なぜ「80%」を基準にしているかというと、現場ではホースの摩擦や水質の影響で、仕様表の数値どおりに性能が発揮されないことがあるためです。20%の余裕を持って水中ポンプを選ぶと、揚程が不足していたため水中ポンプをあらためて調達する、といった手間をなくせます。
ただし、この計算式はあくまで一例であり、メーカーやレンタル会社によって考え方が異なる場合があります。
【ステップ5】作業に適した吐出量(㎥/min)はどれくらいか?
最後にチェックするのが「吐出量」です。吐出量は1分間に排出できる水の量を示しています。
吐出量の数値が大きいほど、短時間で多くの水を移動できます。特にプールや池など大量の水を排水する際には、作業時間や効率に直結するので確認しておきましょう。
注意が必要なのは、仕様表に記載されている最大吐出量は、あくまで高さに負荷がない状態(揚程0m)を想定した理論値であることです。実際は揚程が高くなるにつれて吐出量が下がるため、「性能曲線」をもとに現場で必要な吐出量に適しているかを予測します。
なお、性能曲線とは以下のような「全揚程(縦軸)」と「吐出量(横軸)」の関係を表したグラフです。
揚程が高くなるほど吐出量は下がり、逆に吐出量を増やしたい場合は揚程の負荷を小さくする必要があります。また、吐出量が大きいとホースや配管にかかる圧力も高まるため、使用するホースの太さや耐圧も確認するのがおすすめです。
レンタルにおすすめの水中ポンプ7選
ここからは、レンタルにおすすめの水中ポンプを7つ紹介します。
それぞれの特徴や向いている現場を確認して、自社のニーズに合ったタイプを選びましょう。
1.100V水中ポンプ
※画像は代表商品のものです。
型式(商品コード) | HS2.4S(213120、213100) |
口径 (mm) |
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出力 (kW) |
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電圧 (V) |
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全揚程 (m) |
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吐出量 (m3/min) |
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異物通過径 (mm) |
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重量 (kg) |
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寸法(mm) ※幅1×幅2×高さ(ハンドル含む) |
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一般的な工事現場での排水や湧水対策に適切なのが、100V水中ポンプです。家庭用コンセントでも使用でき使い勝手が良いため、以下のとおり小規模な建築・土木工事の現場で採用されています。
【活用シーン例】
- 一般土木・建築工事の排水用
- 雨水・湧水・溜まり水の排水用
- 一般的な揚水・排水作業全般
吸水口が側面に付いており、効率良く雨水や地下水などの排水が可能です。本体には、アルミダイカストや耐水性ウレタンなどの丈夫な素材を採用しており、軽量ながらも高い耐久性があります。
また、摩耗に強いため砂などによる詰まりも起こりにくく、長く安定して使える点もポイントです。
2.100V強力型ポンプ
※画像は代表商品のものです。
型式(商品コード) | HSD2.55S(216190、216160) |
口径 (mm) |
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出力 (kW) |
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電圧 (V) |
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全揚程 (m) |
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吐出量 (m3/min) |
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異物通過径 (mm) |
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重量 (kg) |
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寸法(mm) ※幅1×幅2×高さ(ハンドル含む) |
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泥や砂が多い現場かつ100Vで使いたい場合には、100V強力型ポンプがおすすめです。通常の100V水中ポンプ(400Wモーター)に比べて、550Wの高出力モーターを搭載しているため、以下のような泥や砂を含む水にも対応できます。
【活用シーン例】
- 基礎工事をはじめとする泥・砂が多く含まれる現場
- 通常の100Vポンプでは対応できない過酷な泥水排水
本体に付いている強力な攪拌羽根が、泥や砂を巻き上げて水を一緒に排水するので、泥・砂の沈殿を防げます。さらに、スタンド付きで安定性が高く、やわらかい地面でも倒れにくい設計です。
3.200V水中ポンプ
※画像は代表商品のものです。
型式(商品コード) | KTV2-22 (215140、215130) |
KTZ47.5 (215531) |
KRS-65.5 (215600 、215590) |
口径 (mm) |
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出力 (kW) |
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電圧 (V) |
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全揚程 (m) |
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吐出量 (m3/min) |
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異物通過径 (mm) |
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重量 (kg) |
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寸法(mm) ※幅1×幅2×高さ(ハンドル含む) |
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※表は横にスクロールできます。
200V水中ポンプは、長距離・高い揚程・大量の搬送に対応しています。出力が高く、トンネル工事や河川の排水など大規模な作業に向いており、業務用として以下のように幅広いシーンで活躍しています。
【活用シーン例】
- 河川・港湾・橋梁・ダム・地下鉄などの土木工事
- 建築現場の湧水・雨水・溜まり水の排水
- 工場設備の揚水・排水
また、吐出し口が上部にあるため省スペースでも使用でき、効率的な排水作業が可能です。「大量の水を遠くまで排水したい」「大規模な現場で使いたい」という場合におすすめです。
4.バキュームレーター
※画像は代表商品のものです。
型式(商品コード) | LSP1.4S(212250、212240) |
口径:吸込×吐出し(mm) |
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出力 (kW) |
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電圧 (V) |
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始動方法 |
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最大吐出水量 (m3/min) |
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最高吐出揚程(m) |
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最大真空度 kPa(mmHg) |
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重量 (kg) |
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キャプタイヤケーブル(m) |
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平らな場所に溜まった水を効率良く吸い上げたいときに活躍する、バキュームレーターを紹介します。排水量はそれほど多くありませんが、以下のように「床を傷つけずに水を吸い切りたい」といった場合に最適です。
【活用シーン例】
- 建設現場のスラブやフロアに溜まった水の排水
- 工場内の設備排水
- 受水槽・タンクの残水処理
なお、設置面を傷つけないよう底面には合成ゴムが使われています。吸いたい水がフラットな場所にある場合は、バキュームレーターの使用がおすすめです。
5.ベビースイーパー
※画像は代表商品のものです。
型式(商品コード) | LSC1.4S(212190、212170) | LSR2.4S(212160、212150) |
口径 (mm) |
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出力 (kW) |
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電圧 (V) |
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全揚程 (m) |
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吐出量 (m3/min) | ― |
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異物通過径 (mm) | ― |
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重量 (kg) |
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寸法(mm) |
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※表は横にスクロールできます。
少量の排水に便利なのが、ベビースイーパーです。水深1mm〜10mm程度の浅い場所でも排水が可能で、水をほぼゼロに近い状態まで吸い上げられます。コンパクトで取り回しやすいため、マンホールピットや以下のようなスペースが限られた場所での排水に最適です。
【活用シーン例】
- 建設現場の床面やピットの排水
- 給排水槽やマンホール内の残水処理
- 狭い場所での排水作業
ただし、異物やゴミが多い場所では詰まりやすいため、使用前に吸い取る水にゴミが含まれていないか確認する必要があります。
6.水中ポンプ(電極式自動運転型)
※画像は代表商品のものです。
型式(商品コード) | HSE2.4 (213310、213300) |
KTVE21.5 (213046、213045) |
口径 (mm) |
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出力 (kW) |
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電圧 (V) |
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全揚程 (m) |
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吐出量 (m3/min) |
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異物通過径 (mm) |
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重量 (kg) |
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寸法(mm) ※幅×高さ(ハンドル含む) |
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ケーブル長さ(m) |
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始動水位(mm) |
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※表は横にスクロールできます。
電極式自動運転型の水中ポンプは、現場の水量に応じて必要なときだけポンプが稼働します。そのため、作業者が常駐していなくても排水作業が自動でおこなえ、省エネや人的負担の軽減が可能です。以下のように、夜間や常時監視が難しい現場に最適です。
【活用シーン例】
- 夜間の排水や雨対策
- 作業者が常駐できない現場
- 広い作業現場を自動で管理したいとき
水位の上昇・低下を検知して自動でポンプのオン・オフを切り替えます。水が電極に触れると作動し、水位が下がると約1分後に自動停止します。詳しい仕組みは以下のとおりです。
排水作業を自動化したい場合は、導入を検討してみましょう。
7.水中ポンプ(カッター付)
※画像は代表商品のものです。
型式(商品コード) | 80C43.7(213575) |
口径 (mm) |
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出力 (kW) |
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電圧 (V) |
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全揚程 (m) |
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吐出量 (m3/min) |
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異物通過径 (mm) |
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重量 (kg) |
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寸法(mm) ※幅1×幅2×高さ(ハンドル含む) |
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汚水や繊維質の異物を含む水を排水するためのポンプが、カッター付きの水中ポンプです。トイレットペーパーや布片などが混じった雑排水にも対応できるため、詰まりが発生しやすい以下のような現場で重宝します。
【活用シーン例】
- 繊維質のゴミを含む汚水の排水
- 汚物混じりの水の排水・搬送
- ポンプの詰まりが懸念される現場
刃付きの羽根車とのこぎり状のサクションカバーによって、繊維質の異物をカットしながら吸い上げます。繊維状のものが詰まると予想される場合は、カッター付きの水中ポンプの利用がおすすめです。
現場に合った水中ポンプを選ぼう
水中ポンプは、排水したい水の種類や作業現場の環境によって適したタイプが異なります。記事内で紹介したポイントをステップごとに確認すれば、現場に合った1台を選びやすくなります。
水中ポンプは、用途に合わせて性能や特長の異なる製品が多数あるため、選定に迷ったらプロに相談するのもおすすめです。
なお、産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、水中のポンプのレンタルをおこなっており、豊富な在庫から現場に合った最適な機種を提案します。
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