ジブクレーンとは、重量物の吊り上げや移動に使用されているアーム(ジブ)の付いたクレーンです。
一口にジブクレーンと言ってもその種類はさまざまで、用途によって使い分ける必要があります。
また、ジブクレーンを安全に使用するためには、いくつかの注意事項があり、適切な周辺機器による安全対策も必要です。
そこでこの記事では、ジブクレーンの種類から使用時の注意点、安全性を高めるための周辺機器まで詳しく解説します。
ジブクレーンとは
ジブクレーンとは、アーム(ジブ)の付いたクレーンのことです。建設現場や造船所、工場など幅広い現場で活躍しています。
ジブとブームの違い
「ジブ」と「ブーム」に違いはなく、呼び方が異なるだけです。どちらも荷物を持ち上げるためのアームを意味します。
現場や職人、会社などによってどちらの名称を使用するかは異なりますが、基本的にどちらも同じものと認識して問題ありません。
ジブクレーンの種類
ジブクレーンには8つの種類があり、場所や用途によって使い分けられています。
- つち形クレーン(ハンマーヘッドクレーン)
- 壁クレーン(ウォールクレーン)
- クライミング式ジブクレーン
- ポスト形ジブクレーン
- 門形ジブクレーン・半門形ジブクレーン
- 低床ジブクレーン
- 塔形ジブクレーン
- 引込みクレーン
1つずつ見ていきましょう。
1.つち形クレーン(ハンマーヘッドクレーン)
つち形クレーン(ハンマーヘッドクレーン)は、塔状の構造物の上に水平のジブをのせたジブクレーンのことです。
つち形クレーンは、荷物を吊り上げて水平方向に移動させるための装置(トロリ)の形式によって、さらに3種類に分けられます。
クラブ式 | 重量のある荷物の取り扱いに適している |
ホイスト式 | 軽量な荷物の取り扱いに適している |
ロープトロリ式 | 超重量のある荷物の取り扱いに適している |
造船所で船を建造する際に使用されるだけでなく、船体の外装工事や内装工事にも用いられるジブクレーンです。
2.壁クレーン(ウォールクレーン)
壁クレーンとは、建造物の壁や柱にジブを水平に取り付けて使用するジブクレーンを指します。
固定式と走行式の2タイプがあり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
固定式 | 壁や柱に固定されるためクレーン全体は移動しない。 ジブの旋回のみで作業をおこなう。 |
走行式 | 壁に取り付けられたレールに沿って、クレーン全体が移動可能。 固定式よりも広い範囲で作業できる。 |
壁クレーンは、工場や倉庫などの限られた範囲内での作業に適しています。床面に設置スペースを取らないため、省スペースで導入可能です。
3.クライミング式ジブクレーン
クライミング式ジブクレーンとは、建物の建設が進むにつれてクレーン自身も高さを上げていくことができるジブクレーンです。
高層ビルやダム建設の、コンクリートを型に流し込んで固める作業などで活躍します。
またクライミング式ジブクレーンは解体できるため、ほかの工事現場に移設後、組み立てて使用できるという利点があります。
4.ポスト形ジブクレーン
ポスト型ジブクレーンは、ポストと呼ばれる支柱を中心にアームが旋回するタイプのジブクレーンを指します。
独立した支柱を持つため壁や天井がない場所でも設置でき、荷物の巻き上げと旋回が可能です。
5.門形ジブクレーン・半門形ジブクレーン
門形(高脚)ジブクレーンは、門のような形をした脚部の上に、旋回する運転室やジブを備えているジブクレーンのことです。脚の部分が門状になっているため、車両が通行できます。
半門形(片脚)ジブクレーンは、高脚ジブクレーンの片足が建物の壁や倉庫の屋上などに設置されているジブクレーンです。
いずれも、岸壁やふ頭(大規模な船着き場)での荷役作業に使用されます。
6.低床ジブクレーン
低床ジブクレーンは、ほかの種類のジブクレーンよりも低い位置で作業ができるように設計されたジブクレーンのことです。
ローラパス(小さな車輪や玉が入った装置)の上に、旋回する運転室やジブを備えた構造をしており、固定式と走行式の2タイプに分けられます。
岸壁やふ頭での荷役用として使用されていましたが、近年では建築用途としてビルの屋上に設置されることもあります。
7.塔形ジブクレーン
塔形ジブクレーンは、塔状の構造物の上にジブを設置したジブクレーンのことを指します。
クライミング(昇降)機能はありませんが、巻き上げ・起伏・旋回・走行が可能なため、広範囲に荷物を運搬可能です。
主に、造船所における外装工事や内装工事に使用されます。
8.引込みジブクレーン
引込みクレーンとは、ジブを上下させても吊り荷が上下移動せず、ほぼ水平に動くように設計されているジブクレーンのことです。
アームを水平に短縮できるため、狭い場所や障害物がある環境での作業に適しています。
また、吊り荷の位置を細かに調整できるため、荷物を正確な位置に配置したい場合など、精密な位置調整が必要な作業にも活用されています。
ジブクレーンを使用する際の3つの注意点
ジブクレーンを使用する際の注意点として、以下の3点が挙げられます。
1つずつ見ていきましょう。
1.定格荷重を守る
ジブクレーンには、それぞれ最大の吊り上げ荷重(定格荷重)が設定されています。
この制限を超える荷物を吊り上げると、クレーンの破損や転倒のリスクが高まるため、必ず定格荷重の範囲内で使用しましょう。
2.資格を持つオペレーターが操作する
ジブクレーンの操作には、クレーン運転士に関する資格が必要です。ジブクレーンの吊り上げ荷重によって、必要な資格が異なります。
必要な資格は以下のとおりです。運転手が使用するクレーン資格を保持しているか必ず確認するようにしましょう。
つり上げ重量とクレーンの種類 |
5t以上 |
5t未満 | ||||
クレーン操作(無線操作式を含む) | 床上運転式クレーン | 床上操作式クレーン | 跨線テルハ | |||
運転資格 | クレーン・デリック運転⼠免許(クレーン限定免許含む)を受けた者 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
床上運転式クレーンに限定したクレーン・デリック運転⼠免許を受けた者 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
クレーン運転の業務に係る特別の教育を修了した者 | 〇 | 〇 |
出典:「クレーン運転に必要な資格|厚生労働省」内の画像を加工して作成
3.天候や環境条件を考慮する
屋外でジブクレーンを使用する場合は、強風や悪天候時の作業は避けましょう。
強風や悪天候の中作業を進めると、吊り荷が不安定になりクレーンの転倒や落下事故につながる危険があります。
ジブクレーンを安全に使用するための周辺機器4選
ジブクレーンを安全に使用するためには、作業者や周囲の安全確保が不可欠です。
ここでは、ジブクレーン作業の安全性を高めるための周辺機器を4つご紹介します。
順番に見ていきましょう。
1.安全ブロック(墜落防止器具)
概要 | 詳細 | |||
型式 | BB-60-SN | KP-12 | KP-20 | KP-25 |
使用体重 (kg) | 120以下 | 30~100 | ||
吊り下げロープの種類 | ベルト | ワイヤーロープ | ||
吊り下げロープの寸法 (mm×m) | 幅18×長5.8
(余巻含む) |
φ4×長12 | φ4×長20 | φ4×長25 |
ランヤード長さ (m) | 5.7 | 12 | 20 | 25 |
停止距離 (cm) ※1 ※4 | ― | 50~100 | ||
衝撃荷重 (kN) ※4 | 5.7 | 3~4 | ||
動作速度 ※2 | ― | 約2m/秒 | ||
ロープ戻り力 (kg) ※3 | ― | 1~2 | ||
自重 (kg) | 1.4 | 4.2 | 7.4 | 7.7 |
※1 停止距離は使用体重85kgの場合。(使用体重が軽いと短くなり、重いと長くなります)
※2 動作速度はすべりクラッチが働くロープの引出し速度です。
※3 ロープ戻り力は自動巻取り機能によるワイヤロープの引張り力です。
※4 停止距離および衝撃荷重は、労働安全衛生総合研究所の「安全帯構造指針」にもとづく試験方法の結果となります。
安全ブロック(墜落防止器具)は、高所で作業する作業員の安全確保のための落下防止器具です。
万が一落下してしまった場合でも、内蔵されたワイヤーロープやベルトが瞬時にロックされ、作業者の落下距離を最小限に抑えます。
2.レーザーエリアシステム
概要 | 詳細 |
電源(V) | AC100(3口必要) |
スキャン(走査)角度 | 225度 |
検出可能距離(m) | 最大40(反射率により変化) |
設定方法 | 制御ユニット内部 スイッチボタン |
センサ部寸法(mm) | 80×80×95 |
センサ部重量(g) | 450 |
防塵・防水 | IP67 |
※制御ユニット⇔センサ間のみ有線接続です。
レーザーエリアシステムは、測域センサーを搭載した監視・警報システムです。
レーザー光でバリアを設定し、その範囲内に物体や人が侵入すると検知・警告します。
ジブクレーンで作業をする際の機材および作業員の接触や誤進入などの事故防止、安全性の向上に寄与します。
3.検知警報システム レーザーカーテン
【レーザー部】
概要 | 詳細 |
最大検出エリア(m) | 25×25 |
取り付けブラケット | 3軸(X・Y・Z)調整可能 |
防塵・防水性 | IP65 |
寸法(mm) | H83×W124×D92 |
使用温度範囲(度) | 常時電源がON状態の場合 -30~60
電源OFF・ONする場合 0~60 |
【制御BOX】
概要 | 詳細 |
通信端末 | Android端末 |
通信方式 | Bluetooth
※送信側制御BOXより10m以内で操作をおこなってください |
ケーブル長さ(m) | ACケーブル5、センサー20、無線機5、積層表示灯5 |
送信機制御BOX:寸法(mm) | H141×W219×D313 |
受信機制御BOX:寸法(mm) | H141×W319×D314 |
送信機制御BOX:電源(V) | AC100 ※ブレーカー有 |
受信機制御BOX:電源(V) | AC100 DC12~24 ※ブレーカー有 |
使用温度範囲(度) | 0~60 |
防塵・防水性 | IP44 |
【無線送受信機】
概要 | 詳細 |
無線送信機:定格消費電流(mA) | 最大50 |
無線受信機:定格消費電流(mA) | 最大75 |
伝達距離(m) | 屋外約350、屋内約100 ※設置環境によって変動あり |
伝達時間(秒) | 約0.5(ノーマルモード受信) |
寸法(mm) | H267×W76×D85 |
無線送信機:質量(g) | 220 |
無線受信機:質量(g) | 230 |
使用温度範囲(度) | -10~50 |
防塵・防水 | IP65 |
【積層情報表示灯】
概要 | 詳細 |
ブザー音色/音圧 | 11タイプ/最大85dB |
質量(g) | 480 |
使用温度範囲(度) | -25~60 |
防塵・防水 | IP65 ※専用ブラケット、防水リング使用時 |
レーザーカーテンは、四角いエリアセンサーを展開し、センサー内に物体が進入すると回転灯と音声で注意喚起をおこなう検知システムです。
進入を検知する最大距離は25m。レーザー部(送信機)と回転灯(受信機)は無線通信のため、最大350m離れていても使用できます。
線路際などでの作業に向いており、機材および作業員の接触防止と監視作業の精度を向上します。
4.レーザーバリアシステム
概要 | 詳細 |
スキャン(走査)角度 | 190度 |
角度分解能度 | 0.1667~1度(設定による) |
測定距離範囲(m) | 最大80、黒色無光沢(反射率10%)のとき40 |
保護構造 | IP67 |
外形方法(mm) | 160×155×185 |
重量(kg) | 約3.7 |
付属品 | 小型LED回転灯(SKHE-100) |
※レーザーバリアの検知エリアの設定操作には専用のソフトウェアが必要となります。操作方法については営業担当にお問い合わせください。
レーザーバリアシステムは、レーザー光を面状に照射してバリアを設定し、そのエリア内に進入した物体を検知・警告します。
検知エリアは、専用のソフトウェアを使用してパソコンから自由に設定可能で、レーザー光を人間が直視しても問題ありません。
また、本体には-30度まで使用できるヒーターが内蔵されているだけでなく、IP67の防水性も備えているため屋外でも問題なく使用できます。
ジブクレーン使用時は事故防止のために安全対策を講じよう
ジブクレーンは、アーム(ジブ)を備えた多機能なクレーンとして、建設現場や造船所、工場などさまざまな場所で活躍しています。
ジブクレーンを安全に使用するためには、定格荷重の遵守や有資格者による操作、天候や環境条件の考慮が不可欠です。
また、安全対策を徹底しておこなうことで、事故のリスクを最小限に抑えることができます。
しかし、実際に安全対策を講じる際は「具体的に何をすればいいのか」「どの安全機器が自社の現場に最適なのか」などの疑問が出てくるかもしれません。
そのようなときは、産業・建設機械のレンタル会社「レント」にご相談ください。
専門知識を持つスタッフが、現場の状況に合わせた安全対策のご提案や必要な機器のレンタルまで、トータルサポートいたします。ぜひお気軽にご連絡ください。