再生プラスチックの”見えないリスク”を可視化するクオンタリスラボの独自技術。レントとの協業で循環型社会の実現を目指す

【話し手】
株式会社Quantaris Lab(クオンタリス ラボ)
榎本 剛司氏(代表取締役)
静岡県立大学 食品栄養科学部 助教
徳村 雅弘氏
株式会社レント 新規事業開発部 デジタルマーケティング課
山内 真也氏(部長代理 兼 課長)

「再生プラスチックを使いたいが、何が含まれているかわからないから慎重に判断せざるを得ない」「安全性や品質を担保できなければ自社の製品には使えない」

サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現が叫ばれる中、再生プラスチックは「どんな化学物質が、どれだけ含まれているのか」が見えないことが、利用拡大が進まない一因となっています。

この課題に対し、再生プラスチックに含まれる数百種類の化学物質を網羅的かつ低コストで定量分析できる独自技術「qNTA法」を開発したのが、静岡県立大学発ベンチャーの株式会社Quantaris Lab(クオンタリスラボ)です。

「循環型社会の実現」という共通のビジョンに共感したレントは、分析機器のリースという新たな形で協業をスタートさせました。

今回は、クオンタリスラボの代表・榎本氏と静岡県立大学の徳村氏、レント新規事業開発部の山内氏に、技術の可能性と両社の協業が描く未来について聞きました。

再生プラスチックの普及を阻む「見えない化学物質」の壁

――いま「再生プラスチックの安全性」が注目されている背景には、どのような社会や法・市場の変化があるのでしょうか?

榎本氏(クオンタリスラボ):大きなきっかけは、EU(欧州連合)が、2031年に自動車への再生プラスチック使用を義務化する案を出したことです。

日本でも再生プラスチックの本格活用に向けた動きが始まっており、2030年には再生プラスチックの国内需要が約93万6,000トン、市場規模は約3,594億円に達すると予測されています。

クオンタリスラボ 代業取締役 榎本 剛司様
クオンタリスラボ 代表取締役 榎本 剛司氏

榎本氏:さらに、CO2排出削減のため、各国が石油から再生可能エネルギーへの転換を進めた結果、石油の生産・出荷量自体が減りつつあります。ケミカルリサイクル(プラスチックを化学的に石油に戻す方法)や、石油ではなく植物素材でプラスチックを製造するという選択肢もありますが、いずれもコストが高く、製品価格が何倍にも跳ね上がってしまいます。

経済合理性を考えれば、使用済みプラスチックを材料として再利用する「マテリアルリサイクル」が現実的です。つまり、今後、プラスチックはリサイクルを前提とした資源活用が重要になっていくという状況なのです。

――それなのに、なぜ再生プラスチックの利用は思うように広がらないのですか?

榎本氏:再生プラスチックには「含有物質を十分に把握しきれない」という根本的な課題があるためです。バージン材(新品材料)であれば添加剤の種類や量を記したレシピが公開されていますが、再生材にはそのレシピがありません。さまざまな出自のプラスチックが混合されるうえ、加工時の熱によって成分同士が反応し、想定外の化学物質が生成されることもあります。

たとえば過去に石垣島では、廃棄漁具からサングラスを作るプロジェクトが企画されました。しかし、サングラスのつる部分は耳に触れ、汗もかきます。再生素材に含まれる化学物質が溶け出して、皮膚のかぶれやアレルギー反応を起こす可能性がある。このような安全性への懸念が、製品化への大きなハードルになるのです。

そんなわけで、現在リサイクルされたプラスチックの多くは、物流用パレットやハンガーなど、さほど品質を問われない製品にしか使われていません。せっかく回収・分別しても、肌に触れる製品や高機能な部品には慎重にならざるを得ず、採用に踏み切れないというのが、メーカーの本音なのです。これが、再生プラスチックの利用が思うように広がらない理由です。

革新的な分析技術「qNTA法」が、再生材の品質を”見える化”

静岡県立大学 食品栄養科学部 助教 徳村 雅弘様
静岡県立大学 食品栄養科学部 助教 徳村 雅弘氏

――クオンタリスラボの技術はどのようにこの課題を解決するのでしょうか?

榎本氏:従来の化学物質分析は「ターゲット分析」と呼ばれ、国際的な基準で指定された十数種類の物質だけをチェックします。いわば氷山の一角だけを見ている状態です。

しかし実際には、規制対象外の物質や、加工時に偶然生成された未知の化学物質も課題の1つといえます。

私たちが開発した「qNTA法(定量的ノンターゲット分析)」は、あらかじめ対象を絞らず、すべての化学物質を検出できるばかりか、その量までもわかる技術です。

――質も量もわかるのはすごいですね。

徳村氏(静岡県立大学 食品栄養科学部 助教):化学物質の分析で一番重要なのは「量」を測ることです。ある物質が「存在する」ことだけがわかっても、それがどの程度危険なのかは判断できません。量がわかれば、「この製品は車のバンパーには使えるが、車室内の内装には不向き」といったリスクに応じた使い分けが可能になります。

すべての成分と量を丸裸にする「qNTA法」

従来の検査方法で量を量るには、たとえば300種類であれば標準物質(ものさしに当たる物質)も300種類用意して個別に測定する必要がありますが、それには膨大なコストがかかります。

私たちのqNTA法は、そのものさしを個別に作らなくてよい仕組みを実現しました。従来と同程度か、それ以下のコストではるかに網羅的な分析が可能です。正確な定量(SIトレーサブル)ができるこの分析法は、現時点で他に例のないアプローチだと考えています

「循環型社会」への共感が生んだ、建機レンタル企業との異色の協業

――レントと協業することになったきっかけを教えてください。

榎本氏:あるスタートアップ支援イベントの懇親会で、300人ほどの立食パーティーの中、たまたま山内さんと名刺交換をしたのがきっかけです。当時、分析に必要な高額機器の導入が急務だったのですが、創業から数ヶ月のベンチャーに数千万円規模のリースを組んでくれる会社はどこにもありません。複数の企業に断られた後だったので、正直期待はしていませんでした。

山内氏(レント):私の方でも、交流会で知り合ったのは偶然の出来事でしたが、その後調べてみると、私たちレントが掲げる「循環型社会の実現」と、クオンタリスラボ様の「サーキュラーエコノミーの推進」という理念がぴったり重なっていたことに驚きました。

新規事業の取り組みにあたっては、経営理念が合致していることはとても重要だと常々考えていましたので、クオンタリスラボ様なら間違いないと直感しました。

――建機レンタルを専門とするレントにとって、分析機器のリースはまったく未知の領域ですが、社内の反応はいかがでしたか?

レント 新規事業開発部 山内 真也
レント 新規事業開発部 山内 真也氏

山内氏:社内の説得には相当苦労しました。「なぜ建機レンタルの当社に分析機器が扱えるのか」「リースは金融事業であって、リース専業会社の領域だろう」など経営層からも慎重な意見が相次ぎました。

しかし私は以前から、レンタル・リース・リユースはそれぞれ近接したビジネスなのに、なぜ当社はレンタルだけに特化しなければいけないのか…と疑問を感じていました。

そこで、なんとか今回リースを成功させようと、社員を集めてリース会社の方を招きリース料の計算方式をゼロから教えてもらいました。

「新規事業開発部を立ち上げたのは何のためか。サーキュラーエコノミーの中にレンタルも位置づけられるのだからリースだって含めても良いはず。ビジネスとして検討すべきです」と経営層へ粘り強く訴え続け、資料のブラッシュアップや分析機器メーカーへの上司の同行を重ね、市場の将来性を理解してもらいました。

まさにレントとしても未踏の一歩だったのですが、再生プラスチック市場のニュースが日に日に増えていったことも追い風になり、最終的に決裁が下りたという経緯です。

榎本氏:あの時の山内さんの熱意には本当に感動しました。さまざまな外部の実績や報道を集めて一人ひとり社内を説得してくれた。山内さんがいなければ、今の事業基盤は作れなかったと思います。

リース支援と営業ネットワークで再生材ビジネスを加速

──協業の中で、それぞれどのような役割を担っているのでしょうか?

榎本氏:私たちは再生プラスチック中の化学物質をqNTA法で網羅的に分析する技術の提供を担っています。

具体的には、リサイクル事業者やメーカーから送られてくるサンプルの安全性と品質評価、そして用途に合うかどうかの判断に必要なデータの提供です。

循環型社会の理念が結んだ異業種タッグ

山内氏:レント側の役割は大きく2つあります。1つは数千万円規模の分析装置のリース支援です。スタートアップにとって高額な設備投資は大きな壁ですが、リースという形で初期の資金制約を補うことができました。

もう1つは建設業をはじめとする幅広い業界への営業サポートや橋渡しです。クオンタリスラボ様にとって馴染みのない業界であっても、レントのネットワークを使えばアプローチできる。分析技術を必要としている企業をご紹介したり、現場の声を拾って技術開発にフィードバックしたりと、接続役を担っています。

──レントが関わることでどのようなメリットが生まれていますか?

榎本氏:まずリースという仕組みそのものが非常にありがたいです。分析機器は6年から8年で新しいモデルが出ますし、法規制の変化が激しい環境分野では測定すべき対象も変わっていきます。購入してしまうと簡単には買い替えられませんが、リースなら常に最新の性能で対応できます。

加えて、レントさんの営業ネットワークの存在は大きいですね。私たちだけではリサイクル業界やメーカーといった限られた範囲にしかアプローチできませんが、レントさんを通じて建設業界や、その先にいるエンドユーザーにまで技術を届けられる可能性が開けました。

さらにレントさんは現場との接点を日常的に持っていますから、「こういう課題で困っている」というリアルな声が私たちの技術開発にも活きてくる。単なる設備リースの関係ではなく、お互いの強みを掛け合わせるパートナーシップになっていると感じます。

建設現場から始まる、再生プラスチック活用の新たな可能性

──プラスチック以外にも、この「分析技術×レンタル」のスキームが応用できる分野はありますか?

徳村氏:あります。私たちは臭いや空気中の化学物質の分析も得意分野です。たとえば建設現場では、改修工事後のボンドの臭いなど、化学物質に起因する課題が多くあります。現状は「何が原因かわからないまま対処している」ケースが多いのですが、分析で原因物質を特定できれば、より効果的な対策が打てるようになります。

山内氏:まさにおっしゃる通りで、建設現場では臭いや空気質の問題は長年の悩みです。やむを得ず換気や消臭剤で対応していますが、原因がわからないまま対症療法をしているのが実情です。また、労働安全衛生法の対象になる化学物質も年々増えていますが、それを測定する手段が追いついていない。クオンタリスラボさんの分析技術は、現場の安全を守るうえでも大きな可能性を持っていると感じます。

──最後に、この記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします。

徳村氏:私たちの分析法は、多種多様な化学物質を従来とはまったく異なるレベルの低コストで分析できる、非常に特徴的な技術です。品質管理に携わる方には、「分析をすることで再生材がより良い製品になる可能性がある」ということをぜひ知っていただきたい。分析は単なるコストではなく、再生プラスチックの価値を高め、新たな市場創出につながる可能性のある投資です。

山内氏:レントは、クオンタリスラボさんの技術を建設業界をはじめとする幅広い取引先へ届けていくことで、循環型社会の実現に貢献したいと考えています。

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