クレーンにはさまざまな部品が使われており、その種類は多彩です。一方で、クレーンの部位や部品の名称を理解していないと、作業内容に誤解が生じ、現場でのコミュニケーションに支障が出かねません。
本記事では、クレーンの種類ごとに部品や名称を解説します。各クレーンに共通するパーツも併せて紹介するので、クレーンの部位の名称が曖昧な場合はご一読ください。
なお、産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、移動式ジブクレーンや門型クレーンをはじめ、豊富な種類のクレーンをレンタルしています。吊り上げたい荷物や重さに適したクレーンを提案しますので、以下のボタンから気軽に見積もりを依頼ください。
代表的な床上操作式クレーンの部品と名称
代表的な以下の床上操作式クレーンについて、部品と名称を解説します。
1つずつ見ていきましょう。
1.天井クレーン
天井クレーンは、工場や倉庫など建物の両側の壁に設置された「ランウェイ」と呼ばれるレールの上を走行するクレーンです。屋外に設置されていても、同じ構造や形状であれば天井クレーンに分類されます。
荷の上げ下ろしと横行、クレーン本体の走行の3つの動きを電動でおこなうものが一般的です。なお、トロリの構造によって、天井クレーンは以下に分類できます。
【天井クレーンの種類】
- トロリ式天井クレーン
- ホイスト式天井クレーン
それぞれ解説します。
トロリ式天井クレーン
トロリ式天井クレーンは、天井クレーンのなかで最も広く使われているタイプです。ガーダの上を「トロリ」と呼ばれる巻き上げ装置を備えた台車が横行し、フックブロックで荷を吊り上げます。
トロリの構造により、天井クレーンはさらに細かく分類され「クラブトロリ式天井クレーン」や「ロープトロリ式天井クレーン」などがあります。
ホイスト式天井クレーン
ホイスト式天井クレーンは、横行する台車部分にトロリではなく電気ホイスト(電気チェーンブロックや電気ワイヤブロック)を用いるクレーンです。
電気ホイストは巻上装置と横行装置が分かれており、コンパクトな点が特徴です。そのため、比較的小型で吊り上げ能力が小さいものが多く、主に中軽作業の工場や倉庫などで採用されています。
2.ジブクレーン
ジブクレーンは、荷を吊り上げるための腕である「ジブ」を持つクレーンです。低床ジブクレーンや塔形ジブクレーンをはじめ、ほかにもさまざまな形式があり、種類が豊富です。移動できるタイプのジブクレーンには、キャスターやアウトリガーなどが付いていることもあります。
なお、ジブクレーンについては以下の記事でも解説されているので、あわせてご一読ください。
ジブクレーンとは、重量物の吊り上げや移動に使用されているアーム(ジブ)の付いたクレーンです。 一口にジブクレーンと言ってもその種類はさまざまで、用途によって使い分ける必要があります。 また、ジブクレーンを安全に使用するためには、[…]
実際の移動式ジブクレーンを詳しく見たい場合は、以下のボタンからご覧ください。
3.橋型クレーン
橋型クレーンは、地上に敷設された2本の走行レールの上を移動するクレーンです。ガーダの上を移動するトロリの構造によって、以下の種類に分けられます。
【橋型クレーンの種類】
- ホイスト式
- クラブトロリ式
- ロープトロリ式
- マントロリ式
昇降する際に使うはしごには転落防止用の「背かご」が付いているほか、点検をおこなうための「点検歩道」が設けられています。
なお、橋型クレーンは門型クレーンともいい、画像のようにキャスターが付いているタイプは移動が可能です。詳細を知りたい場合は、以下より移動式門型クレーンのページをご覧ください。
代表的な移動式クレーンの部品と名称
代表的な以下の移動式クレーンについて、部品と名称を紹介します。
1つずつ見ていきましょう。
1.トラッククレーン
トラッククレーンは、トラックのシャシ(車台)にクレーン装置を搭載したもので、公道を自走して現場への移動が可能です。車両を走行するときの運転室と、クレーンを操作するための運転室は、別々に設けられています。
作業時は、車体を安定させるアウトリガーを地面に設置し、旋回サークルによってクレーン部分を回転させて、荷物を吊り上げます。
2.積載形トラッククレーン
トラックの運転室(キャブ)と荷台の間に小型のクレーン装置を搭載している車両が、積載形トラッククレーンです。荷物の積み下ろし作業と運搬を1台でおこなえます。
クレーン装置には、操作レバーや油圧を発生させる油圧ポンプなどが付いています。この油圧を利用してブームの伸縮や起伏、旋回をおこない、荷物を吊り上げる仕組みです。
なお、以下では2tクラスから6tクラスのクレーン付トラックを掲載しているので、調達を検討している場合はご覧ください。
3.ホイールクレーン
ホイールクレーンも1つの運転室で走行とクレーン操作の両方が可能です。車輪は3輪式か4輪式で、小回りが利くため狭い場所での作業に適しています。
アウトリガーが装備されている車両が一般的ですが、一部の車両にはアウトリガーがありません。その場合は前輪や全タイヤの外側に取り付けられた鉄輪が、荷を吊り上げるときに接地します。
4.ラフテレーンクレーン(ラフタークレーン)
ラフテレーンとは英語で「不整地」を表し、ラフテレーンクレーンはその名のとおり、整備されていない土地での作業が得意な移動式クレーンです。
専用のキャリヤに、テレスコピックブームとクレーン装置を搭載しています。アウトリガーで車体を固定して作業しますが、短い距離であれば荷を吊った状態での走行が可能な車両もあります。
5.クローラクレーン
クローラクレーンでは、クローラ式の走行装置の上に、クレーン装置と鋼材を三角形に組み合わせたトラス構造の「ラチスブーム」を搭載しています。
クローラは接地面積が広く、舗装されていない軟弱な地盤でも沈み込みにくいので、安定した状態で作業が可能です。ただし、公道を自走できないため、作業現場へはトレーラーなどで輸送されます。
なお、ここまで紹介したクレーンについては以下の記事でも解説しているので、あわせてご一読ください。
重量物を吊り上げたり移動させたりするクレーン車には、さまざまな種類があります。その種類は幅広いため、適した車両を選ぶためにはそれぞれの特徴を知っておくことが重要です。 本記事では、代表的なクレーン車の種類や特徴をまとめました。クレーン[…]
また、クローラークレーンのなかでもコンパクトな「ミニクローラークレーン」は以下で紹介しています。小さいクローラークレーンをお探しの場合はご覧ください。
クレーンに関連するパーツ
クレーンに関連するパーツは下記のとおりです。
【クレーンに関連するパーツ】
- ジブ
- トロリ
- ホイスト
- ノッチ
- カンチレバー
- ランウェイ
- ガータ
1つずつ見ていきましょう。
1.ジブ(ブーム、アーム)
ジブは、クレーンで荷物を吊り上げるために本体から斜め前方に突き出た、腕のようなパーツです。伸縮したり角度を変えたりして、作業範囲を調整できます。
「ジブ」が正式な名称ですが、現場では「ブーム」や「アーム」と呼ばれる場合もあり、どの呼び方をするかは会社や現場によって異なります。
2.トロリ
吊り上げた荷物を水平方向に移動させるための装置がトロリです。チェーンブロックと組み合わせて使用され、I型鋼やH型鋼などの鋼材に取り付けてレールを横行します。
トロリには、巻上装置と横行装置が一体となったクラブトロリ、ワイヤロープを介して荷を移動させるロープトロリ、両者の中間的な構造を持つセミロープトロリなどの種類があります。
3.ホイスト
ホイストは、荷物を垂直に昇降させる巻上装置で、ロープやチェーンを巻き取るドラムやリフトホイールを備えています。動力式のホイストの種類は以下のとおりです。
【ホイストの種類】
- 電気ホイスト
- エアホイスト
- 油圧ホイスト
このほかに手動で操作する人力式のホイストもあります。
4.ノッチ
ノッチとは、クレーン車のアクセルのことです。自動車のアクセルのように細かく速度を調整できるわけではなく、ほとんどが「低速」か「高速」しか選べません。
そのため、急に低速から高速へ加速しないよう、操作は慎重におこなう必要があります。
5.カンチレバー
主に橋形クレーンにおいて、走行レールの外側までガーダを張り出して作業範囲を拡大させた部分を、カンチレバーといいます。
船舶への荷役に用いられる橋形クレーンでは、船舶が出入りするときの妨げにならないよう、カンチレバー部分を上へ折り畳むことが可能です。このように起伏できるカンチレバーは「起伏けた」とも呼ばれます。
6.ランウェイ
天井クレーンや橋形クレーンが走行するための、建物の柱や床などに設置される軌道がランウェイです。「ランウェイガータ」や「走行ガータ」と呼ばれる場合もあります。
レールや、レール同士をつなぐ継手、レールを支える梁(はり)、固定用ボルトなどで構成されています。
7.ガーター
ガータは「ガータ」や「桁(けた)」ともいう、荷物をつり下げて横行するトロリを直接支える部分です。吊り上げる荷物の荷重やクレーン自体の重量に耐える必要があるため、十分な強度持つように設計されています。
構造によっていくつか種類があり、I字型鋼でできた「Iビームガーター」や箱型の「ボックスガーター」などがあります。
クレーンの部位や部品の名称を覚えよう
クレーンの部位や部品の名称を把握すると、現場で指示や説明を聞いたときスムーズに理解できます。クレーンの種類によって、さまざまな部位や部品がありますが、安全に作業を進めるためにもまずは現場で使うクレーンから覚えていきましょう。
なお、クレーンを用意する際にはレンタルという選択もあります。レンタルであれば、作業内容や現場に適したクレーンをその都度用意できるので、購入やメンテナンスにかかる費用を抑えることが可能です。
なお、産業・建設機械のレンタル会社「レント」ではトラッククレーンやミニクローラークレーンなどを取り扱っています。「自社に合うクレーンを探している」という場合は、以下のボタンより気軽に見積もりを依頼ください。