エレベーターのない建物で重い荷物を階段で運ぶ作業は、腰や膝への負担が大きく、転倒や荷物の落下といった労災リスクも高まります。こうした負担やリスクの軽減に役立つのが、階段用の台車です。
階段用の台車には電動式と手動式があり、荷物の重さや作業の頻度に応じて選ぶことが重要です。本記事では、おすすめの階段用の台車5選と、安全に使うポイント、現場に合った選び方を解説します。
なお、産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、階段に対応した電動台車を各種取りそろえています。現場に最適な台車をご提案いたしますので、以下のボタンよりお気軽に見積もりを依頼ください。
※レントでは、お客様の安全を考慮しご利用いただける業種を限定しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
おすすめの階段用の台車5選
階段用の台車には、大きく分けて以下の5つの種類があります。

詳しく見ていきましょう。
1. バッテリー式:クローラ階段運搬台車

【クローラ階段運搬台車の特徴】
- ゴム製クローラーが階段を「面」で捉え、揺れが少なく安定して昇降
- 排気ガスゼロで屋内や換気が不十分な現場でも使用できる
- 1回の満充電で最大90分の連続運転が可能
最大積載量1,000kg(斜面や階段では最大500kg)まで対応可能な「クローラ階段運搬台車」は、最大40度の急な傾斜や階段もスムーズに昇降できる電動台車です。特に地下鉄工事やビル改修工事での建設資材の運搬に適しています。
戦車のように車体の中心を軸に回転できるので、階段の踊り場など狭いスペースでもその場で方向転換が可能です。
※取り扱いには、レントおよびメーカーが主催する取扱説明講習・操作指導講習を受講していただく必要がございます。
2. バッテリー式:電動式階段運搬車「電ネコ」

【電ネコの特徴】
- 階段を下りる際にヘリを感知し、タイヤの滑落を防止するエッジブレーキシステム
- キャタピラ式よりも床材を傷つけにくいゴム製のノーパンクタイヤ
- 折りたたみ式でコンパクトに収納できるハンドル
- ワンタッチで着脱可能なキャスター付き台車も装備
「電ネコ」は、最大積載量330kgまで対応できる電動階段台車です。
平地でも動かしやすく、音も静かなため、病院やオフィスビルでの使用に適しているのもポイントです。実際に、制御盤、サーバーラック、大型家電、飲料ケースなど、幅広い重量物の運搬に活用されています。
※レントでは、安全性を考慮し、機械設置や重量物搬送、設備工事業者など専門業者の方を対象に貸し出しております。
3. バッテリー式:電動階段台車「のぼれる台車」

【のぼれる台車の特徴】
- 平地は車輪、階段はクローラーの2つを使い分けて運搬できる
- 誰でも直感的に操作できるシンプルな設計
- 身長に合わせてハンドルを3段階で調整できる
- 連続使用時間は約80分
コンパクトさが特徴の「のぼれる台車」は、最大積載量160kgまで対応できる電動階段台車です。狭い通路や階段での作業に向いており、さまざまな現場で活用されています。
※レントでは、安全性を考慮し、機械設置や重量物搬送、設備工事業者など専門業者の方を対象に貸し出しております。
4. 三輪式:階段台車

【三輪式の階段台車の特徴】
- 安価で軽量、折りたたみ式が多く収納しやすい
- 使用者が荷物の重さを支えながら階段を上り下りする必要がある
- 重量物の運搬には向いていない
- 蹴込み板のない「オープン階段」では使用できない
三輪式の階段台車は、中心軸の周りを3つの車輪が回転する構造の台車です。車輪が階段の垂直面(蹴込み板)に沿って回転し、段差を乗り越えます。家庭での荷物運搬や、たまに発生する軽量物の移動など、使用頻度が低い場合に適しています。
5. クローラー式:階段台車

【クローラー式の階段台車の特徴】
- 地では普通の2輪台車として使用できる
- 階段では使用者がキャタピラを手動で動かして昇降
- 電動式に比べて導入コストを抑えられる
- 荷物の重さを支えながら台車を押したり引いたりする体力が必要
ゴム製のキャタピラを搭載した2輪運搬台車が、クローラー式の階段台車です。キャタピラが回転して進むため、階段を坂道のように滑らかに昇降できます。普段は通常の台車として使いながら、階段がある時だけキャタピラで昇降できるので、1台で両方の用途に使用可能です。
階段用の台車を安全に使用する2つのポイント
階段用の台車は便利ですが、使い方を誤ると重大な事故につながります。安全に使用するために、以下の2つのポイントを押さえましょう。

それぞれについて詳しく解説します。
1. 作業の開始前に点検をおこなう
作業前に点検をおこなうことで、機器の不具合による事故を防げます。一般的な点検項目は以下のとおりです。
| 点検項目 | 内容 |
| 機械系統(本体) |
|
| タイヤ/クローラー |
|
| 電動部 |
|
| 安全システム |
|
| 付属品 |
|
点検項目は機種により異なるため、取扱説明書を必ず確認しましょう。特に階段での作業は、平地に比べて転倒や滑落のリスクが高まります。作業前の点検を習慣にすることで、こうした事故を防ぐことが可能です。
2. 荷物を正しく固定する
運搬中の荷崩れは、転倒や落下の直接的な原因となります。荷物を運ぶ際の基本は「重心を低く中央に保ち、荷締めベルトで確実に固定する」ことです。
具体的には、重い荷物を下に、軽い荷物を上に積みます。複数の荷物を運ぶ場合は、荷締めベルトで台車と一体化するように固縛しましょう。重心を低くフレームに近づけることで、安定性を高められます。
階段用の台車を選ぶ3つのチェックポイント
階段用の台車を選ぶ際は、以下の3つのポイントを確認することが重要です。

順番に解説します。
1. 荷物に見合った最大積載量やサイズであるか?
台車選びで最初に確認することは、どんな荷物を運ぶのかを明確にすることです。台車の最大積載量(耐荷重)を必ず確認し、それを超えないようにしましょう。過積載は重大事故に直結します。
なお、台車の耐荷重は以下のように「キャスター1輪の許容荷重 × 4個 × 0.8(安全係数)」で計算します。

この計算式はあくまで目安です。安全に使うためには、実際に運ぶ荷物の最大重量よりも2〜3割ほど余裕を持った耐荷重を選びましょう。
重量だけでなく、荷物の「形状」と「重心」も重要です。サーバーラック、大型家電、背の高い機器など、重心が高い荷物は不安定になりやすく、荷締めベルトで固定し、ゆっくり動かす必要があります。荷物を荷台の中央に載せ、偏りがないようにすることも重要です。
また、畳や石膏ボードのような長尺物は踊り場で曲がれない可能性があるため、事前に経路の確認が必要です。メーカーによっては「建具・畳用アタッチメント」や「ボンベ用アタッチメント」など、特殊な形状の荷物に対応するオプションがあるので活用しましょう。
2. 現場の階段幅や勾配に適しているか?
台車を選ぶ際は、性能だけでなく現場の状況確認も重要です。階段は傾斜があるうえ幅が限られているため、軽く滑ったりつまずいたりするだけで重大な事故につながる恐れがあります。
問題なく作業をおこなうためにも、階段の幅や勾配について以下のように確認しておきましょう。
【階段幅や勾配について確認しておくべきポイント】
- 人と荷物を積んだ台車が、周囲にぶつかることなく余裕を持って進行できる
- 階段の勾配(こうばい)が、台車の最大角度を超えていない
また、滑りやすい階段での使用は、転倒や滑落などにつながりやすく特に注意が必要です。
- 濡れていないか?
- 油が付着していないか?
- 凍結していないか?
これらを作業前にチェックし、安全に作業できることを確認しておきましょう。
3. 階段を何度往復する想定か?
階段を何度往復するかによっても、選ぶべき台車のタイプが変わります。まずは、現場で階段を使う頻度を事前に確認しておきましょう。
往復回数が多いほど体への負担が大きくなり、転倒や滑落などの事故も起こりやすくなります。そのため、運搬の頻度に合わせて、電動式か手動式を選ぶことが重要です。
| 分類 | 特徴 | 詳細 |
| 電動式 | バッテリー駆動のモーターで自動昇降 |
|
| 手動式 | 使用者が自分の力で動かす補助器具 |
|
上記のように、重量物を頻繁に運ぶなら「電動式」、軽量物や使用頻度が低いなら「手動式」を選ぶのがおすすめです。
なお、台車は、タイヤの形式によって以下の2タイプに分かれます。
【タイヤの形式別タイプ】
- 三輪タイプ:3つの車輪が回転して段差を乗り越える
- クローラー(キャタピラ)タイプ:クローラーで階段の上段と下段を同時に捉え、坂道のように昇降する
それぞれ昇降の仕組みや安定性が異なるため、運搬する荷物の重さや階段の形状に合わせて選びましょう。電動台車の種類や特徴については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
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最適な階段用の台車を選んで安全に作業をしよう

階段用の台車を使えば、重い荷物を安全に運べるだけでなく、作業時間を短縮し、作業者の負担を軽減できます。台車を選ぶ際は「荷物の重さ・形状」「利用頻度」「階段の形状」の3点を確認しましょう。重い荷物をよく運ぶなら電動式、軽い荷物や使う回数が少ないなら手動式がおすすめです。
産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、階段に対応した電動台車を各種取りそろえています。お客様の安全を考慮しご利用いただける業種を限定しておりますので、「どの機種が合うか分からない」「まず現場で試したい」という場合は、以下よりお気軽にご相談ください。