【事例】建設現場でよくある事故3選|原因と防止策もあわせて解説

建設現場における労働災害は、全産業のなかで最も死亡災害の割合が高いです。「自分の現場は大丈夫だろうか」「悲惨な事故の話を聞いて不安になった」といった不安を一度は感じたことがあるのではないでしょうか。

本記事では、建設現場で実際に発生した事故の事例をまとめました。事故発生の原因を知り適した安全対策をおこなうことで現場の安全性を高められるので、参考になれば幸いです。

産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、機械のレンタルを通じて、建設現場や工事現場の安全な作業環境づくりをサポートしています。現場に適した安全対策のご提案も可能ですので、まずは以下からお気軽にご相談ください。

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建設業の事故発生率はほかの産業より高い

日本の全産業のなかで、建設業は労働災害による死亡者数が最も多いです。厚生労働省の発表によると、令和6年の建設業における死亡者数は232人で、前年と比較して9人(4.0%)増加しています。

参考:令和6年 労働災害発生状況について|厚生労働省

死亡災害の内容を見ると墜落・転落が毎年多く、事故原因の割合は変化しながらもこの傾向は例年変わりません。以下は、建設業における死亡事故の原因として多い上位5つまでの発生状況をまとめたグラフです。

参考:令和6年における労働災害発生状況(確定値)|厚生労働省

死亡災害は長期的に見ると減少傾向にあるものの、高齢作業員や一人親方などの死亡災害は増加傾向にあるなど、依然として建設業は危険の高い産業であることがわかります。

 建設現場でよくある死傷災害TOP5

建設現場において休業4日以上の負傷を含む死傷災害で多い事故は、以下のとおりです。

参考:令和6年における労働災害発生状況(確定値) |厚生労働省

死亡災害だけでなく死傷災害においても、「墜落・転落」が最も多い災害となっており、高所作業における危険性の高さがうかがえます。特に屋根・屋上等の端・開口部からの災害が約3割、足場からの災害が約2割を占めており、はしご・脚立等からの墜落・転落災害も増加傾向にあるため注意が必要です。

では実際にどのような事故が発生しているのでしょうか。次からは、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」から、建設現場でよくある労働災害の事例をいくつか紹介します。

【事例1】墜落・転落

墜落・転落災害は、建設業における死亡災害の最大の要因です。墜落・転落とは、人が樹木、建築物、足場、機械、乗物、はしご、階段、斜面等から落ちることを指します。

1.バックホーから転落して死亡

バックホーから転落して死亡

業種 道路建設工事業
事業場規模 1~4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 掘削用機械
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
  • 死亡者数:1人
  • 休業者数:0人
  • 不休者数:0人
  • 行方不明者数:0人
発生要因(物) 作業方法の欠陥
発生要因(人) 職場的原因
発生要因(管理) 安全措置の不履行

バックホーをローダーダンプなどの重機輸送車に積載することは、工事現場においてよくあることです。今回の事故が発生した原因としては、以下のような要因が挙げられます。

【バックホーから転落して死亡した原因】

  • 適切な勾配を有する道坂・盛土・仮設台等を使用していなかった
  • 使用する重機の種類や能力に応じた運行経路等の作業計画を定めていなかった
  • 作業者間の連絡調整が不十分であった
  • 運転者がシートベルトや保護帽の着用を怠った

このような事故を防ぐには、ローダーダンプなど専用の重機搬送車を使用することが最も重要です。事前に現場の状況を確認し、安全な運行経路や作業手順を記した作業計画書を作成・周知しておく必要もあります。

さらに、ダンプカーの運転者にはシートベルトと保護帽の着用を義務付け、習慣化することも欠かせません。

2.小型移動式クレーンが転倒し、ジブに押されて作業者が墜落

小型移動式クレーンが転倒し、ジブに押されて作業者が墜落

業種 その他
事業場規模 1~4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 移動式クレーン
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
  • 死亡者数:0人
  • 休業者数:1人
  • 不休者数:0人
  • 行方不明者数:0人
発生要因(物) 物の置き場所の不適切
発生要因(人) 憶測判断
発生要因(管理) つり荷に触れ、下に入りまたは近づく

次は、港湾工事で、通称「カニクレーン」と呼ばれる小型移動式クレーンを使い、桟橋から4m下の台船へ資材を降ろす作業中に発生した事故です。この事故の原因は、以下と考えられます。

【小型移動式クレーンが転倒した原因】

  • 吊り荷の重量が規定荷重を超えていた
  • アウトリガーの張り出し状態が左右非対称であった
  • 小型移動式クレーンを無資格者が運転した
  • 吊り荷の玉掛けや機材の移動を1人でおこなった

事故調査の結果、クレーンは定格荷重160kgの状態で290kgの荷物を吊っているという大幅な過荷重の状態であったことがわかりました。荷の重さを正確に把握し、クレーンの性能表で作業半径に応じた定格荷重を確認することは安全対策の基本です。

そして何より、移動式クレーンの運転は有資格者が実施することが重要です。資格があれば、定格荷重やアウトリガーの状態を確認する重要性を理解できた可能性があります。資格の有無を確認し、無資格者には絶対に運転させないという管理体制が求められます。

【事例2】建設機械によるはさまれ・巻き込まれ

建設機械やクレーン等による災害も、建設現場で多く発生する重大事故の1つです。重機周辺の死角、オペレーターの周囲認識不足、不適切な操作などが複合的に絡み合い、重大事故を誘発しやすいのが特徴です。

1.鉄骨を降ろす作業中、鉄骨にはさまれ死亡

鉄骨を降ろす作業中、鉄骨にはさまれ死亡

業種 その他の建設業
事業場規模 1~4人
機械設備・有害物質の種類(起因物)
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
被害者数
  • 死亡者数:1人
  • 休業者数:0人
  • 不休者数:0人
  • 行方不明者数:0人
発生要因(物) 防護措置・安全装置の欠陥
発生要因(人) 職場的原因
発生要因(管理) 安全措置の不履行

この事故は、自社の作業場で移動式クレーンを使い、トラックの荷台から鉄骨を降ろす作業中に発生しました。運転席側のアウトリガーを張り出さないまま約1tの鉄骨を吊り上げたため、移動式クレーンがバランスを失い鉄骨が落下しています。

【移動式クレーンの荷台から鉄骨が落ちた原因】

  • 運転席側アウトリガーを張り出していなかった
  • 作業前にアウトリガーを最大まで張り出しているか確認が不足していた
  • 定格荷重を超える質量の荷を吊っていた
  • 移動式クレーンの作業計画の作成を怠った
  • 作業開始前に必要な安全活動が不十分であった

移動式クレーンを用いる作業では、アウトリガーを最大まで張り出すことを原則とし、作業を開始する前に確認することが重要です。また、荷物の質量を事前に確認し、定格荷重を超える作業は絶対におこなわないよう徹底します。

そのためには、詳細な作業計画を作成しすべての作業員に周知することが求められます。日々の作業開始前には、必ず危険予知活動(KY活動)やリスクを事前に予測しておき、その日の作業に潜む危険を全員で共有しておきましょう。

2.ダンプトラックが突然後退しはさまれる

ダンプトラックが突然後退しはさまれる

業種 木造家屋建築工事業
事業場規模 1~4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) トラック
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
被害者数
  • 死亡者数:1人
  • 休業者数:0人
  • 不休者数:0人
  • 行方不明者数:0人
発生要因(物) 防護措置・安全装置の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 安全措置の不履行

次に紹介するのは、住宅建築現場で、ダンプトラックから砕石を降ろしている最中の事故です。運転手がエンジンを切りサイドブレーキを引いて車を離れた直後、ダンプが突然後退しました。

【ダンプトラックが突然後退した原因】

  • 積み降ろしの作業場所が少し傾斜していた
  • サイドブレーキが確実に引かれていなかった
  • 輪留め等の逸走防止措置を怠った
  • 作業方法や作業分担などが明確に決められていなかった
  • 安全に関する教育も不十分であった

現場はわずかに傾斜していましたが、サイドブレーキが完全にかかっておらず、輪留めも使用されていなかったことが直接の原因です。ほんの少しの傾斜でも、数トンの車両は簡単に動き出してしまいます。

ダンプトラックから離れる際は、平坦な場所を選ぶことが原則ですが、傾斜地で作業せざるを得ない場合は、ブレーキを確実にかけることに加え、必ず輪留めを使用するなどの逸走防止措置をおこなうことが重要です。

【事例3】転倒

転倒は、足場の悪い場所で作業することの多い建設業において発生頻度の高い事故です。転倒災害は、不整地や資材の散乱などで作業員が転倒するケースだけでなく、重機ごと転倒するケースも多く発生しています。

1.車両積載形トラッククレーンが転倒し負傷

車両積載形トラッククレーンが転倒し負傷

業種 橋梁建設工事業
事業場規模 30~99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 移動式クレーン
災害の種類(事故の型) 転倒
被害者数
  • 死亡者数:0人
  • 休業者数:1人
  • 不休者数:0人
  • 行方不明者数:0人
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) コミュニケーションなど
発生要因(管理) 荷等の積み過ぎ

クレーンの操作中にトラッククレーンが転倒する事故は、後を絶ちません。今回の事例でトラッククレーンが横転した原因は以下のことが挙げられます。

【トラッククレーンが横転した原因】

  • 荷重計の針が振れて読み取りにくく、荷重量の正確な把握が困難だった
  • つり上げ荷重が過荷重であった
  • 運転資格のない者にトラッククレーンの運転をさせた

つり上げ時には荷重計を確認しながら作業をおこなうことが重要です。荷重計は読み取りやすいよう、日頃から点検・修理をおこなっておきましょう。

移動式クレーンを使用して重量物を運搬する場合には、過荷重にならないよう確認するだけでなく、過負荷防止装置を装備したクレーンを選んでおくとより安心です。そして何より、移動式クレーンの運転は資格を持つ者が責任を持って実施することが求められます。

2.2連の移動式足場を移動中に転倒し負傷

2連の移動式足場を移動中に転倒し負傷

業種 機械器具設置工事業
事業場規模 1~4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 足場
災害の種類(事故の型) 転倒
被害者数
  • 死亡者数:0人
  • 休業者数:3人
  • 不休者数:0人
  • 行方不明者数:0人
発生要因(物) 構成材料の欠陥
発生要因(人) 危険感覚
発生要因(管理) 不意の危険に対する措置の不履行

この事故は、店舗の改修工事で高さ5.3mの移動式足場を2組並べ、その上で溶接作業をおこなっていました。移動式足場が転倒した原因は以下のとおりです。

【移動式足場が転倒した原因】

  • 枠組足場の脚部に脚輪を取り付けただけの不安定な構造の足場であった
  • 作業方法等も再検討せずにただ押して移動させようとした
  • 元請の現場代理人が十分に安全な作業方法の検討しなかった
  • 作業準備および的確な作業指示もしていなかった
  • 移動式足場の最上部に手すりを設置していなかった

移動式足場を使用する際は、まず安全な作業計画を立てることが重要です。安定性の高い足場を選び、手すりや昇降設備を正しく設置し、最大積載荷重を明記する必要があります。

そして、足場を移動させる際は絶対に人を乗せてはいけません。工事の管理者だけでなく作業者の安全意識も高め、責任者の指揮のもとで安全に作業を進めることが求められます。

作業員の命を守るためには安全対策が重要

建設現場の事故は、1つの原因で起こることは稀です。不適切な作業環境、個人の不注意、そして組織の管理体制の不備といった複数の要因が複雑に絡み合って発生します。

忙しい建設現場では、誰もが品質を確保しながら工期どおりに進められるよう日々の仕事に取り組み、自分が事故に巻き込まれるとは考えていません。悲しい事故を未然に防ぐためには、作業員一人ひとりの意識向上はもちろんのこと、会社として安全対策を強化することが重要です。

産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、安全対策に活用できる多様な機械を準備し、お客様の安全な現場づくりをサポートしています。安全対策は、企業の信頼性を高めるためだけはでなく、作業員の大切な命を守るために重要な取り組みです。

レントでは、約40年つちかった実績をもとに、現場の状況をヒアリングしたうえで最適な建設機械や安全対策をご提案しますので、まずは以下からお気軽にご相談ください。

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※6つの事例内に記載した画像は「職場のあんぜんサイト|厚生労働省」内のイラストを加工して作成しています。

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