削岩機とは?形状・動力源による種類の違いや現場に合った選び方を解説

削岩機とは、トンネル工事やダム建設、採石場などで岩盤に穴をあける建設機械のことです。現場の状況によって適した機種が異なるため、機種選びを誤ると、「パワー不足で穴があかない」「電源がなく機械が使えない」といった問題が発生し、工期遅延につながる恐れがあります。

本記事では、削岩機の基本から、混同されがちなハンマードリルやハンドブレーカーとの違い、現場に合わせた選び方をまとめました。「現場に適した削岩機を知りたい」とお考えの場合はご一読ください。

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削岩機(さくがんき)とは

削岩機(さくがんき)とは、自然石の岩石などに穴をあける作業(削孔=さっこう)をおこなう建設機械です。ロックドリルやドリフタードリルとも呼ばれ、主に以下のような現場で使用されています。

【主な使用現場】

  • 岩石の除去が必要なトンネル工事
  • 鉱山での採掘
  • 建物の解体工事

削岩機は、「機械本体」「ロッド」「ビット」の3つのパーツで構成されています。ロッドの先端には超硬合金チップが付いたビットが取り付けられており、このビットが回転しながら岩石を打撃することで、硬い岩盤にも穴があく仕組みです。

ハンマードリルやハンドブレーカーの違い

機械名 使用目的 使用対象 仕組み
削岩機
  • 穴あけ
  • 自然石
  • 硬い岩盤
  • 回転+打撃
ハンマードリル
  • 穴あけ
  • はつり
  • コンクリート
  • アスファルト
  • 回転+打撃
ハンドブレーカー
  • はつり
  • コンクリート
  • アスファルト
  • 打撃のみ

削岩機とよく似た機械に「ハンマードリル」や「ハンドブレーカー」がありますが、上記のようにそれぞれ使用目的や対象が異なります。

穴あけが目的の場合、使用対象が「自然石や硬い岩盤」であれば削岩機、「コンクリートやアスファルト」であればハンマードリルを選びます。一方で、削ったり壊したりする「はつり作業」が目的の場合は、打撃力に特化したハンドブレーカーが適しています。

ハンマードリルやハンドブレーカーは、岩石などの自然石を壊すことには向いていません。自然石を対象とする場合は削岩機を使用しましょう。

なお、ハンドブレーカーについて詳しく知りたい方はコチラの記事で解説していますので、ご一読ください。

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削岩機の種類

削岩機は「形状」と「動力源」によって分類されます。

1つずつ見ていきましょう。

1.形状による種類

削岩機の形状は、作業規模や現場環境に応じて「手持ちタイプ」と「取り付けタイプ」の2つに大別されます。

種類 特徴
手持ちタイプ
  • 作業者が手で持って操作する軽量なタイプ
  • 以下の場所で使用される
    • 法面工事
    • 足場の悪い場所
    • 重機が立ち入れない小規模な現場
取り付けタイプ
  • 油圧ショベルや専用の大型機械(ドリルジャンボ)のアームに取り付ける
  • 手持ちタイプに比べて高出力で、深い掘削が可能
  • 以下の場所で使用される
    • 地中深くを掘削する採掘現場
    • 地質調査
    • トンネルの掘削現場
上記のように、手持ちタイプは重機が入れない場所でも作業員だけで削孔でき、取り付けタイプは人力では不可能な深さまで掘削できます。なお、法面(のりめん)工事とは、盛土や切土で造られた人工的な斜面が崩れないように補強する工事のことです。
取り付けタイプの削岩機は、油圧ショベルなどの重機に取り付けて使用します。なかでも、小型の掘削機に削岩機を組み合わせた「穿孔機(せんこうき)」は、山間部の鉄塔建設など、重機の搬入が難しい場所での岩盤削孔に最適です。

削岩機(ハンドタイプ)の詳細はこちら

穿孔機の詳細はこちら

2.動力源による種類

削岩機を選ぶ際のもう1つの重要なポイントが、動力源です。主に「空圧式」「油圧式」「エンジン式」の3種類があり、それぞれ得意な作業環境が異なります。

動力源 特徴 主な現場
空圧式
  • パワーが強い
  • 排気音が大きい
  • 建設現場
  • 法面工事
油圧式
  • パワーが強い
  • 温度変化に強い
  • 静音性が高い
  • トンネル
  • ダム
  • 大規模な採石場
エンジン式
  • 外部からの動力源が不要
  • 機動性に優れる
  • 登山道
  • 林道
  • インフラ未整備地

空圧式は、コンプレッサーで作られた圧縮空気を動力源とするタイプです。一般的な建設現場で広く使われていますが、排気音が大きいため都市部や住宅街では騒音トラブルにつながる恐れがあります。

トンネルやダム、海底工事など特殊な環境下で使用したい場合は油圧式がおすすめです。外部エアーを用いることで水中作業にも対応できます。

また、エンジン式は外部からの動力源が不要で、登山道や災害現場など電源のない場所での使用に適しています。このように、動力源によって得意な環境や作業条件が異なるため、作業環境に合わせて選ぶことが重要です。

削岩機を選ぶ3つのステップ

ここからは、現場に最適な削岩機を選ぶ3つのステップを紹介します。

順番に見ていきましょう。

【ステップ1】どのような用途で使用するか?

削岩機は現場や用途によって適した機種が異なるため、まずは作業内容を明確にすることが重要です。削岩機が必要な作業としては、以下の例があります。

【削岩機が必要な作業例】

  • 建設現場で、構造物を固定するアンカーを設置したい
  • トンネル工事で、発破用のダイナマイトを装填する穴をあけたい
  • 電源も重機も入れない山間部や災害現場で、道を塞ぐ岩を砕きたい
  • 港湾工事で、水中の岩盤を掘削したい

自分の現場がどの作業に近いかを把握したうえで、次のステップで形状や動力源を選択しましょう。

【ステップ2】目的に必要な機械の形状や動力源はどれか?

次に、目的を果たすために必要な機械の形状と動力源を組み合わせて考えます。まず選ぶのは、手持ちタイプと取り付けタイプといった2つの形状です。

【形状の種類】

  1. 手持ちタイプ:作業の規模が小さく、重機が入れない現場で用いる
  2. 取り付けタイプ:作業の規模が大きく高出力が必要で、重機が入れる現場で用いる

上記のように作業規模に合わせてタイプを選んだら、次に動力源を決めます。

【動力源の種類と適した作業環境】

  1. 空圧式:一般的な建設現場
  2. 油圧式:屋内、静かな住宅地、水中、寒冷地など
  3. エンジン式:電源がない場所

形状を動力源を順に選んでいくと、以下のように組み合わせが決まります。

形状 動力源 作業内容 備考
手持ちタイプ 空圧式 一般的な建設現場でのアンカー設置 汎用性が高い
エンジン式 電源のない山間部や災害現場で岩を砕く 外部電源が不要で機動性に優れる
油圧式 水中で岩盤を掘削する 外部エアーを用いることで水中作業が可能
取り付けタイプ 油圧式 トンネル工事で発破用の穴をあける 高出力で安定した動作が必要

ただし、上記はあくまで一例です。作業現場によって適した削岩機が異なるため、現場の状況を詳しく確認したうえで組み合わせを決めましょう。

【ステップ3】どのビットを選択するか?

最後に、削岩機の先端に取り付けるビットを確認します。削岩機の作業効率は「打撃数」「回転数」に加え、岩質に合わせたビットの選択が重要です。

主なビットの種類は次のとおりです。

ビットの種類 詳細
カービット
  • 一文字の刃先を持つ
  • 粒子が細かく硬い自然石に向いている
  • 削孔速度が速く価格も安い
クロスビット
  • 十字の刃先を持つ
  • 目が粗いコンクリートや、亀裂の多い岩盤に適している
  • 刃先が岩目に入らず均等な穴をあけられる
ボタンビット
  • 先端に超硬のボタンチップが埋め込まれている
  • 耐摩耗性に優れている
  • 5m以上の深い穴や連続した削孔作業に適している

ビットを選ぶ際は、削岩機との互換性も確認しましょう。ビットの軸部分(シャンク)は、機種によって対応する形状が異なり、形状が合わないと取り付けられないためです。

トンネル工事や採石場では、作業中に硬い岩盤から軟らかい地層へ変わるなど、地質が変化するケースがあります。ロックピン式やスリーブ式など、工具なしでビットを素早く交換できる機種であれば、地質の変化に即座に対応でき、作業を止めることなく削孔を続けられます。

また、各ビットには推奨される回転数が設定されているため、機械本体がその回転数に対応しているかも併せて確認することが重要です。

効率的かつ安全に作業するために最適な削岩機を選ぼう

削岩機は現場の状況と岩の硬さに合わせて選ぶ必要があります。トンネル工事なら取り付けタイプと油圧式、山間部なら手持ちタイプとエンジン式というように、現場環境で最適な組み合わせが異なります。

機種を絞り込んだら、購入かレンタルかを判断しましょう。使用頻度が低い場合や初めて使う場合は、購入費用や保管場所の確保が不要で、メンテナンスもレンタル会社が対応するレンタルがおすすめです。

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