測量機器の精度は、現場の信頼性と成果の質を左右する重要な要素です。
しかし、日々の使用や環境の変化によって、機器の測定精度は徐々にズレが生じる可能性があります。そこで欠かせないのが「校正」というプロセスです。
本記事では、測量機器の校正とは何か、いつ行うべきか、そして精度を長期的に維持するためのポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。現場でのトラブルを未然に防ぎ、安心して測量業務に取り組むための完全ガイドとして、ぜひご活用ください。
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測量機器の校正とは? なぜ重要なのか

測量機器は、建設、土木、地理情報システム(GIS)など、様々な分野で正確な計測を行うために不可欠なツールです。しかし、どんな精密機器も、使用頻度や環境条件、経年劣化などによって、徐々に誤差が生じてきます。この誤差を放置すると、計測結果の信頼性が損なわれ、最終的にはプロジェクト全体の品質を低下させる可能性があります。そこで重要となるのが「校正」です。
【校正】
- 校正とは、『測量機器の示す値と、既知の標準値との差を調べ、必要に応じて調整する作業』のこと
- 国家標準や国際標準にトレーサビリティ(追跡可能性)が確立された標準器を用いて、測量機器の精度を評価し、その結果を「校正証明書」として発行
- 「校正証明書」は、機器の精度が一定の基準を満たしていることを客観的に証明するものであり、品質管理や法規制の遵守において重要な役割を果たす
校正を行うことで、測量機器の精度を維持し、計測結果の信頼性を高めることができます。その結果、手戻りの防止、コスト削減、安全性向上など、様々なメリットが期待できます。例えば、建設現場で正確な測量ができれば、構造物の施工精度が向上し、手直しや修正の必要性が減ります。また、地盤沈下や構造物の変形を正確にモニタリングできれば、早期に異常を検知し、事故を未然に防ぐことができます。
【校正ができる主要な測量機器】
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校正時期の目安:最適なタイミングとは

測量機器の校正時期の目安は、6ヶ月〜1年程度になります。機器の種類、使用頻度、使用環境、そして企業の品質管理体制など、様々な要因によって最適なタイミングは異なるため注意しましょう。一般的には、以下の3つのケースを目安として校正時期を検討することが推奨されます。
【メーカー推奨の校正周期】
- ほとんどの測量機器メーカーは、製品ごとに推奨される校正周期を設定している
- 上記の校正周期は過去のデータや試験結果に基づいて、機器の精度が維持できる期間を算出したもの
まずは、お使いの機器の取扱説明書やメーカーのウェブサイトなどを確認し、推奨される校正周期を把握しましょう。
【使用頻度や使用環境】
- 測量機器の使用頻度が高い場合や、過酷な環境で使用される場合は、推奨される校正周期よりも短い間隔で校正を行う必要がある
例えば、建設現場で使用される測量機器は、振動や粉塵、温度変化などの影響を受けやすく、精度が低下しやすいと考えられます。また、精密な計測が要求される場合は、より短い間隔で校正を行うことが望ましいでしょう。
【品質管理体制】
- 企業の品質管理体制において、測量機器の校正周期が定められている場合は、その規定に従う必要がある
ISO9001などの品質マネジメントシステムを導入している企業では、計測機器の校正に関する規定が設けられていることが一般的です。
具体的な例として、トータルステーションの場合、JSIMA(日本測量機器工業会)は、『原則として1年以内の校正周期を推奨』しています。これは、トータルステーションが様々な現場で使用され、環境条件の影響を受けやすいことを考慮したものです。しかし、精密な計測が要求される場合は、半年に一度、あるいは3ヶ月に一度など、より短い間隔で校正を行うこともあります。また、GPS測量機の場合は、基準局からのデータを受信する際に、電波状況や天候の影響を受ける可能性があるため、定期的な検証が必要となります。
校正時期を決定する際には、上記の目安を参考にしながら、過去の校正履歴や計測データの変動などを分析し、総合的に判断することが重要です。
校正周期を決める際の考慮点:失敗しないために

測量機器の校正周期を決定する際には、以下の点を考慮することが重要です。これらの要素を総合的に判断することで、より適切な校正周期を設定し、無駄なコストを削減することができます。
1. 機器の重要度
計測結果がプロジェクトの品質に大きく影響する機器は、短い間隔で校正を行うことが望ましいです。例えば、構造物の安全性に関わる計測に使用される機器は、常に高い精度を維持する必要があります。
2. 計測の許容誤差
計測結果に求められる精度が高いほど、短い間隔で校正を行う必要があります。例えば、精密な位置情報を必要とする測量に使用される機器は、わずかな誤差も許容されません。
3. 過去の校正データ
過去の校正データから、機器の精度がどのように変化してきたかを分析し、校正周期を調整することができます。もし、過去のデータから精度の低下が早いことが判明した場合は、校正周期を短縮することを検討しましょう。
4. 使用環境の安定性
温度や湿度、振動などの影響を受けやすい環境で使用される機器は、短い間隔で校正を行う必要があります。例えば、高温多湿な環境で使用される機器は、腐食や劣化が進みやすく、精度が低下しやすいと考えられます。
5. 校正コスト
校正には費用がかかるため、費用対効果を考慮して校正周期を決定する必要があります。あまりにも短い間隔で校正を行うと、コストがかさむだけでなく、機器の使用頻度が低下する可能性もあります。
校正周期を長く設定した場合、校正費用を抑えることができますが、計測結果の信頼性が低下するリスクがあります。逆に、校正周期を短く設定した場合、計測結果の信頼性は向上しますが、校正費用がかさむというデメリットがあります。最適な校正周期は、これらのメリットとデメリットを比較検討し、”バランス”を取ることが重要です。
校正周期を決定した後も、定期的にその妥当性を評価し、必要に応じて見直すことが重要です。例えば、新しい機器を導入した場合や、使用環境が大きく変化した場合は、校正周期を見直すことを検討しましょう。
校正証明書とは:品質保証の証

校正を行うと、その結果を証明する「校正証明書」が発行されます。校正証明書は、測量機器の精度が一定の基準を満たしていることを客観的に証明するものであり、品質管理や法規制の遵守において重要な役割を果たします。
校正証明書には、通常、以下の情報が記載されています。
| 種類 | 項目 | 
| 機器の情報 | 
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| 校正日 | 
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| 校正方法 | 
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| トレーサビリティ | 
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| 発行者情報 | 
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※表は横にスクロールできます。
校正証明書は、単に機器の精度を証明するだけでなく、『計測結果の信頼性を保証するための重要な証拠』となります。例えば、建設工事において、構造物の寸法や位置が設計図通りに施工されていることを証明するためには、校正された測量機器を用いて計測を行い、その結果を校正証明書と共に提出する必要があります。
トレーサビリティを証明する書類
トレーサビリティを証明する書類は校正証明書のほかに2つあります。『基準器検査成績書(試験成績書)』と『トレーサビリティ体系図』です。
【検査成績書(試験成績書)】
- 測量機器の構造や精度が規定の基準を満たしているかどうかを確かめる検査に合格すると交付される書類
検査成績書は、校正に用いた基準器(特定計量器の検定や検査を実施する際に基準となる計量器)が規定の要件を満たすものであったことを証明する書類になります。
【トレーサビリティ体系図】
- トレーサビリティ体系図は、測定器の校正に使用された標準器が、どのように上位標準に繋がっているかを示す図
- この図を見ることで、測定値が国家標準などのより高位の基準にトレーサブル(文書化された切れ目のないつながりを証明するもの)であることが確認できる
例えば、トレーサビリティ体系図に「国家計量標準」という記載があれば、その測定器の校正に使用された標準器が、国家計量標準に直接繋がっていることが分かります。
これらの書類は校正証明書や測定器の取扱説明書と一緒に保管し、必要に応じていつでも参照できるようにしておくことが望ましいです。
測量機器を使うならレンタルがおすすめ
測量機器を使うなら、購入よりもレンタルがおすすめです。

測量機を購入すると、保管場所の確保や定期的なメンテナンスが必要になります。レンタルなら、使用後に返却するだけで済み、保守・修理費用や保管スペースの負担が軽減されます。
さらに、レンタル会社は、機器を常に校正・点検しているため、精度の高い測量が保証されます。購入した機器は校正の手間や費用がかかり、精度維持が難しくなることもあります。
また、測量内容や現場条件に応じて、必要な機能を備えた機器を都度選べるのがレンタルの強み。購入では機器の汎用性に限界があり、追加投資が必要になるケースもあります。不定期に測量機器が必要になる方には、購入よりもレンタルのほうが使い勝手が良いかもしれません。
上記のように購入よりもレンタルのほうがメリットが多いことから、もしこれから測量機器の購入をご検討されている方は、レンタルという手段もご検討ください。
なお産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、測量機器のレンタルをしているだけではなく、購入した測量機を校正依頼できる「測量機器預かり校正」サービスも実施しています。既に測量機器を購入している方もご利用いただけるサービスになるため、購入した後の維持メンテナンスの負担軽減にオススメです。
まとめ:測量機器の校正は、信頼性を高めるための投資
測量機器の校正は、単なるメンテナンス作業ではなく、計測結果の信頼性を高め、プロジェクト全体の品質を向上させるための重要な投資です。適切な校正時期を設定し、信頼できる校正依頼をすることで、手戻りの防止、コスト削減、安全性向上など、様々なメリットを享受することができます。
本記事では、測量機器の校正時期について、様々な角度から解説しました。校正時期の目安、校正周期を決める際の考慮点、そして校正証明書の重要性について理解を深めていただけたでしょうか。
測量機器の校正は、専門的な知識やスキルが必要となる作業です。もし校正に関する疑問や不安がある場合は、専門業者に相談することをおすすめします。専門業者は、豊富な経験と知識に基づいて、最適な校正プランを提案してくれるはずです。
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