建設業の未来を変える「GX」とは?今知っておくべき最新事情を解説

ニュースやCMなどで「GX」という言葉を聞いたことがありませんか。GXとは、「グリーン・トランスフォーメーション」の略称で、環境を守りながら、経済も成長させる社会にしようという取り組みのことです。

GXは、環境を守るだけではなく、作業の効率化や入札・受注面での評価向上など会社にもメリットをもたらす可能性があり、建設業界でも対応が求められつつあります。

本記事では、建設業でGXが必要な理由から、現場でできる具体的な取り組みをまとめました。大企業だけでなく、中小企業が明日から実践できる内容もありますので、ご一読ください。

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建設業におけるGXとは

冒頭でお伝えしたとおり、GXとは、「グリーン・トランスフォーメーション」の略称で、簡単にいうと「環境を守りながら、経済も成長させる社会にしよう」という取り組みのことです。

建設業のなかでは、これまで石油やガソリンで動かしていた重機を電気で動くものに変えたり、建物自体を省エネ化したりすることで、二酸化炭素(CO2)の排出を減らす取り組みが該当します。

日本を含む世界150カ国以上が、「2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロにする)」を目指すと宣言したことを受けて、建設業を含むあらゆる産業でGXへの取り組みが求められています。

建設業におけるGXの現状

建設業では現在どのような動きが見られるのでしょうか。重要なポイントは3つあります。

順に見ていきましょう。

1.国を挙げてGXが推進されている

日本政府は、国の目標として掲げた「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、建設業をGXの重点分野として位置づけました。現在、国全体で以下のような施策が動いています。

施策 説明
GX推進法(2023年)
  • 企業が省エネ設備や電動重機を導入しやすくするために、国が資金面をサポートする仕組みを作った法律
  • 新しい技術やエネルギーを取り入れる企業ほど、支援を受けやすい
第7次エネルギー基本計画(2025年2月に閣議決定)
  • 2040年に向けて「どのように電気をつくり、使っていくか」という国の方針で、3年ごとに見直しが義務付けられている
  • 火力発電に頼りすぎないようにし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やす方針

また、国土交通省もGXを後押ししており、次のような取り組みを進めています。

出典:国土交通省

住宅・建築物分野では、2025年4月から、新築住宅を含むすべての建物で省エネ基準を守ることが義務化され、エネルギーを無駄なく使う「ZEH」「ZEB」といった建物が、これからの標準になりつつあります。

【ZEH・ZEBとは?】

どちらも「環境にやさしく光熱費削減にもつながる」ことを目指した建物のこと

  • ZEH(ゼッチ):一般住宅が対象
  • ZEB(ゼブ):オフィスビル、商業施設、工場、学校などの建物が対象

建設・施工分野で進んでいるのは、電動ショベルやハイブリッド重機などのCO2排出量の少ない機械の導入です。また、ICT施工などデジタル技術を使った効率化も進み、現場のエネルギー消費を減らすことが期待されています。

2.中小企業もGXへの取り組みが広がっている

GXは大企業だけのものではありません。中小企業や小規模事業者にも広がり始めています。

中小企業庁の「2025年版中小企業白書」によると、すでに多くの中小企業が元請けから「脱炭素に協力してほしい」と要請を受けていると答えています。具体的な協力内容は、「事業所での省エネ化」や「自社のCO2排出量の報告」などです。

出典:中小企業庁

元請け企業自体が事業全体でのCO2削減を義務付けられているため、そのパートナーである協力会社も無関係ではいられません。つまり、「GXへの対応が、受注の条件になる可能性が高まっている」ということです。

3.現場レベルでもGXへの対応が求められている

GXの推進は、建設現場レベルでも取り組まれており、近年では次のようなデジタル技術(建設DX)の導入が進められています。

項目 詳細
BIM/CIM
  • 建物を3Dモデルなどのデータで管理する
  • ミスや手戻りが減り、工程の短縮が可能
ICT建機
  • 設計データをもとに重機を自動制御する
  • 不要な動きや測量ミスなどを抑え、燃料を節約
ドローン
  • 無人で遠隔から操縦可能な飛行機器
  • 施工管理の精度を上げ、資材や人員の削減
AI
  • 人工知能が工程の最適化や効率化などを図る
  • 作業ミスを回避し、稼働時間を減らしCO2排出を削減

デジタル技術を取り入れることは、中小企業にとってハードルが高いイメージがありますが、以下のような取り組みも注目されています。

  • 電動ショベルやハイブリッド重機を導入する
  • LED照明やソーラーパネルを利用する
  • 空調設備を省エネ型へ変更する

これらは、「レンタルで利用できる」「購入単価が比較的低い」など、初期費用を抑えながら取り入れやすい点が特徴です。燃料費の節約によってCO2排出を減らすだけでなく、騒音の軽減、作業環境の改善にもつながるため、少しずつ取り入れる企業が増えています。

建設GXを進めるうえでの3つの課題

GXは建設業にとって重要なテーマであるものの、課題もあります。実際に建設GXを進めるうえで中小企業が抱えやすい課題は以下の3つです。

1つずつ解説します。

1.初期投資や設備更新のコストが高い

1つ目の課題は、初期投資や設備更新をする際にまとまったコストを必要とする点です。

GXを進めるためには、電動ショベル・ハイブリッド重機・省エネ設備・太陽光発電など、新しい機械や設備を導入する必要があります。新しい機械は従来の機械よりも価格が高く、中小企業にとっては大きな負担です。

実際、以下の調査でも、「コストに見合うメリットがすぐに感じられない」という声が挙がっています。

出典:中小企業庁

この負担を少しでも軽くするため、政府は中小企業の負担を減らすよう補助金や支援制度を用意しています。補助金制度についてはこちらで詳しく紹介していますので、併せてお読みください。

2.専門知識を持つ人材が不足している

人材不足も課題の1つです。GXへ対応するには、最新のデジタル技術や再生可能エネルギーの活用など、これまでとは違う新しい知識やスキルが求められます。深刻な人手不足に悩む建設業界では、デジタル技術に慣れた人材が多くないため、「ICT建機を使いこなせる人がいない」「データ管理ができる社員がいない」といった声も聞こえます。

また、「環境よりコストを優先したい」と考える現場と、「少しでもGXを進めたい」と考える経営層の意識の違いも課題です。GXへの対応を進めるには、知識や技術面だけでなく、社内全体で「なぜGXに取り組むのか」という意識の共有が求められます。

3.業界全体での連携や情報共有が難しい

業界全体で足並みをそろえることも重要なポイントです。

建設業は、元請、下請、協力会社、資材メーカーなど、さまざまな立場の企業が集まって1つの現場を進めます。そのため、現場全体でGXを進めるには、1社だけではなく業界全体で取り組みを共有することが重要です。

しかし実際は、以下のような問題から足並みをそろえるのが難しい状況にあります。

  • 元請けと下請けの情報共有が不十分
  • GXに関する知識が企業ごとにバラバラ
  • 新しい技術の導入スピードに差がある

元請けだけが省エネ型設備を試みても、下請けが対応できなければ設備を有効に活用しきれません。反対に、下請けが電動建機を導入しても、元請けの施工方法が従来のままでは、導入した電動機械が稼働せず終わる恐れもあります。

現場全体でCO2削減を目指すには、業界全体で情報を共有しながら、同じ目標に向かってGXに取り組む体制づくりが重要です。

GX推進に活用できる補助金・支援制度

前述したとおり、政府や自治体はGX推進を支える補助金や支援制度を進めています。代表的な補助金・支援制度を以下にまとめました。

補助金・支援制度名 支援機関 説明
建築GX・DX推進事業 国土交通省 建築物の脱炭素化(GX)とデジタル化(DX)を一体的に推進する補助金制度
SHIFT事業 環境省 工場や事業場におけるCO2排出量削減を先導する取り組みを支援する制度
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 環境省 CO2排出抑制への設備投資や技術導入時に、費用の一部を国が補助する制度
商用車等の電動化促進事業(建設機械) 経済産業省 建設機械の電動化に向けた建機・充電設備の導入に対する補助金制度
中小企業等事業再構築促進事業 経済産業省中小企業庁 ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応する補助金制度
ものづくり補助金 全国中小企業団体中央会 中小企業・小規模事業者等が取り組む新たなサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善の設備投資等を支援する制度

※2025年11月時点での情報です

このほかにも、自治体や商工会議所が独自におこなう支援策があります。例えば、東京都で用意されている中小企業の脱炭素経営をサポートする制度です。

なお、補助金の申請要件や補助率、公募期間は年度ごとに変更される場合があるため、導入を検討する際は、各省庁や自治体の公式ホームページで必ず最新の情報を確認してください。

建設現場ですぐにできるGXの取り組み例

ここでは、建設現場ですぐに取り組める具体的なGXの取り組み例を紹介します。

順に見ていきましょう。

1.電動式(バッテリー式)の機械を使用する

まず取り組みやすいのが、従来のエンジン式機械を電動(バッテリー)式に切り替える方法です。電動式であれば排出ガスが出ないため、直接CO2排出量を減らせます。

電動式として活用できる機械の例は、次のとおりです。

活用できる商品 概要
パーソナルリフト(バッテリー式)
  • 屋内での高所作業で使われる一人乗りの小型リフト
バッテリーフォークリフト(建設工事用)
  • 建設現場内の資材運搬に使えるフォークリフト
バッテリーフォークリフト(設備メンテナンス用)
  • 工場・倉庫など屋内での荷物運搬に使えるフォークリフト
電動式ミニバックホウ
  • 小規模工事や屋内解体などで活躍するコンパクトな建機

電動式は、エンジンによる車体振動が少なく作業者の疲労を軽減するうえ、エンジンの熱が発生せず作業中に車体の発熱に悩むことがありません。さらに、エンジンに比べて騒音が抑えられるため、夜間や住宅街での作業にも使いやすいというメリットもあります。

なお、大きな建機だけでなく、以下のような機器でもバッテリー式があります。

活用できる商品 概要
コードレス背負式 高周波バイブレータ
  • コンクリート打設現場で使われる機器
  • 電源ケーブルが不要な背負い式バッテリーで一人作業が可能
電線圧着機(充電式/マルチ)
  • 電気工事で使う圧着作業を、バッテリーでおこなえる工具
充電式掃除機

 

  • コードレスのポータブル掃除機
  • 片手で使えるスティック式
バキュームクリーナー背負式/充電式(環境対策用)
  • 背負って使える業務用掃除機
  • 粉じんの拡散を防ぎながら、広い範囲を安全に清掃できる
充電式LEDライト QLIGHT
  • 発電機が不要なLEDライト
バルーンライト 充電式
  • バッテリー式の現場照明

幅広く電動化が進んでいるため、現場に合わせて選択が可能です。

【参考】バッテリーを再利用する

バッテリーは、使い終わったらすぐに捨てるのではなく、再生してもう一度使うことでGXにつながります。再利用によって、新しいバッテリーをつくる過程で排出されるCO2をカットできるためです。

企業にとっては、環境への配慮だけでなくコスト削減にも役立ちます。実際にレントの事例では、以下のとおりバッテリー再生を利用してコストを約50%削減できたケースもあります。

バッテリーの再利用については国が積極的に推進しているわけではありませんが、こうした取り組みは現場レベルでできる環境にやさしい工夫といえます。バッテリー再生技術の仕組みについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

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2.ソーラーパネルで電源を確保する

次に取り入れやすいのが、ソーラーパネルやポータブル蓄電池を活用した電源確保です。従来の発電機は軽油を燃やして発電するためCO2が発生しますが、ソーラーパネルは太陽の光で電気をつくるので発電時にCO2を排出しません。

そのため、建設現場の事務所や仮設電源で使う電力をCO2を排出しないクリーンなエネルギーでまかなえます。

以下は、建設現場で取り入れやすい製品例です。

取り入れやすい製品 概要
小型警告灯
  • 軽量・コンパクトな小型の警告灯
  • 注意喚起したい場所に簡単に取り付けられる
ソーラー信号機
  • ソーラーパネルで作動する信号機
  • 電源コードがないため、電源が取りづらい現場でも設置できる
ポータブル蓄電池
  • 排ガスや騒音が出せない現場で発電機の代わりに使える電源設備

ソーラーパネルは太陽光があれば蓄電でき、電源確保が難しい現場で活躍します。さらに、ポータブル蓄電池も便利です。屋内用ですが、大きな電力が必要な機材にも対応できるタイプがあり、ガソリン発電機の代わりとして使える場合があります。

3.AIが搭載された製品を活用する

AI(人工知能)が入った重機や施工管理システムの活用も、GXとして活躍します。AIによって重機のむだな運転を減らすことで、稼働時間を最小限に抑えCO2の排出を減らせるからです。

【AIの活用例】

  • 重機の稼働データを集めて分析する
  • 作業していないのにエンジンだけが動いている重機を見つける
  • 現場で必要な重機の台数や稼働時間などもAIに提案してもらう

また、「高所作業車のブーム、バケットの動きを制御する」「危ない場所に近づくと警告する」など、アシスト機能を搭載している重機もあります。こうしたAIのサポートがあると、作業ミスやヒューマンエラーが減り、長時間の作業による疲れを減らすことが可能です。

その結果、安全かつ効率的に作業を進め、機械を動かす時間が短くなりCO2排出を減らすことにつながります。

建設業の現場でもできることからGXを進めよう

GXは、これからの建設業にとって欠かせない重要なテーマです。環境への負担を減らせるだけではなく、燃料費などのコストを下げたり取引先から信頼されて仕事を増やしたり、人材の確保につながったりと、経営面でも多くのメリットがあります。

とはいえ、GXに対応した設備や機械をそろえるには、まとまった初期費用がかかるため、中小企業にとってはハードルが高いのが実情です。

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▼参考記事

カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省
「エネルギー基本計画の概要」| 資源エネルギー庁
脱炭素と経済成長を同時に実現!「GX政策」の今|エネこれ|資源エネルギー庁
令和7年4月1日から省エネ基準適合の全面義務化や構造関係規定の見直しなどが施行されます!! | 国土交通省
GXの実現に向けた国土交通省の取組と政府の動きについて丨国土交通省
地理空間情報:「建築・都市のDX」とは丨国土交通省
2025年版中小企業白書(HTML版) | 中小企業庁

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