重機のグラップルとは?種類やメリットから活用シーンなどを総まとめ

グラップルとは、木材や資材などをつかむ作業に特化した重機用のアタッチメントのことです。林業から建設現場、災害時の復旧作業など、さまざまな場面で広く使われています。

本記事では、グラップルの概要やメリット、活用シーンなどをまとめました。グラップルの取り付け先である油圧ショベルの選び方も解説しているので、最後までご覧ください。

なお、産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、油圧ショベルの一種であるバックホウやミニバックホウをレンタルしています。クレーン付きや超小旋回タイプなど、豊富な種類のなかから現場に適した機種を提案しますので、以下のボタンから気軽に見積もりを依頼ください。

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グラップルとは

「グラップル」とは、油圧ショベルなどの重機に取り付けるアタッチメントの一種で、作業や用途に応じて交換できる装置のことです。英語の「grapple(つかむ)」を語源とし、トングのような見た目で、主に木材や資材をつかんで持ち上げたり運搬したりする作業に使われます。

上下に2枚の爪が付いた「ハサミ」や、爪が複数枚ある「フォーク(フォークグラップル)」も広義ではグラップルのひとつです。また、メーカーや現場によっては、グラップルを装着した重機そのものを「グラップル」と呼ぶケースもあります。

グラップルを取り付けられる油圧ショベルには、大規模な工事向けの大型機から、バックホウやミニショベルと呼ばれる小型機までさまざまなサイズがあります。

グラップルの種類

グラップルの種類はざまざまですが、駆動方式の違いで見ると主に以下の3種類に分けられます。

No. 種類 概要
1 機械式グラップル
  • トングの片側が固定され、片方のみをバケットダンプシリンダーで動かす
  • 油圧配管の追加が不要で、バケット交換と同じ要領で簡単に取り付けられる
2 油圧式グラップル
  • 油圧を利用して作動する
  • トングが両開きになっており、機械式より開口の幅が広い
  • 取り付けには共用(往復)配管が必要
3 旋回式グラップル
  • アタッチメント自体が回転可能で、方向や角度を柔軟に調整できる
  • 全旋回式の場合、360度回転でき、資材をつかんだまま旋回が可能
  • 取り付けるには、5本(全旋回用)の配管が必要
  • 集材・整理・積み込み作業を効率よくおこなえる

「機械式グラップル」は片側の爪だけが動くシンプルな構造で、取り付けも簡単です。また、両方の爪が動く「油圧式グラップル」は開口の幅が広いため大きな資材もつかめます(ただし、使用には油圧配管が必要)。

より高機能なものとして、アームの先端でアタッチメントを回転させられる「旋回式グラップル」があり、つかんだ資材を置く場所や向きを細かく調整したい場面に向いています。

グラップルを使う3つのメリット

グラップルを使うメリットは以下の3つです。

グラップルを使う3つのメリット

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.運搬や積み込みなどさまざまな作業に対応できる

グラップルを使用するメリットは、多岐にわたる作業を1台でこなせる点です。例えば、林業の現場においては、以下のような作業をグラップル付き重機1台で対応できます。

【グラップルでできる作業例】

  • 丸太の持ち上げと運搬
  • 積み込み
  • 木寄せ(伐採した木を集める作業)
  • 玉切り(丸太を一定の長さに切る作業)
  • 枝条処理(伐採木から枝を払い落とす作業)
  • はい積み(木材を一定の方法で規則正しく積み上げる作業)

林業にとどまらず、台風や地震で発生した倒木の撤去や、建物を解体する際のがれきの処理も可能です。使う重機を変えることなく複数の作業をおこなえるため、作業時間の短縮につながります。

2.作業時の安全性を高められる

作業する際に安全性を高められる点も、メリットの1つです。従来の林業や解体現場では、重い木材やコンクリートの塊を人力で処理していたため、挟まれ事故や転落の危険がありました。

一方で、グラップルを使うと、作業員は倒木や重量物から距離を取りつつ安全な位置から作業が可能です。そのため、人力で重い木材やコンクリートを扱う必要がなくなり、ケガや事故の危険性を減らせます。

災害現場や解体工事といった不安定な環境で作業をする際は、安全性を高められるグラップルがあると便利です。

3.作業者の負担を軽減できる

前述のとおり、グラップルはさまざまな作業ができて従来よりも効率を高められるため、作業員の身体への負担を減らせるメリットがあります。

例えば、チェーンソーの機能が搭載されている「グラップルソー」を使うと、ハーベスタなどでは作業しにくい玉切りもおこなえ、機械を使い分ける手間がありません。作業のたびに機械を変える必要がないと、1つの作業が終わったら別の作業へすぐに移れるため、業務時間も減らせます。

なお、油圧式のグラップルは特につかむ力が強く、大きい木材や重い木材を運びやすいため、より作業員の負担を軽くできます。

グラップルが活躍する4つのシーン

グラップルが活躍するシーンは、主に以下の4つです。

グラップルが活躍する4つのシーン

それぞれどのように使われるのか見ていきましょう。

1.林業

グラップルが活用されている分野の1つが林業です。主に伐採された丸太をつかみ、トラックへの積み込みや集積作業をおこないます。

また、チェーンソー機能付きの「グラップルソー」であれば、つかんだ木材をその場で切断可能です。現場で出荷サイズの丸太に加工できるため、作業工程を短縮できます。

なお、間伐作業をおこなう場所が急斜面や地形の複雑なところであっても、機動性の高い小型重機にグラップルを装着すれば、安全かつ効率的に作業を進められます。

2.建設・解体現場

建設現場や解体現場でもグラップルが使われます。建設現場では、鉄骨やパイプなどの資材を運搬・整理したり、仮設構造物の設置を補助したりするときに利用されます。アタッチメントであるグラップルは、現場にある油圧ショベルに装着するだけで使用できるため、導入も簡単です。

また、解体現場では、作業中に発生する木材・金属・コンクリートなどの廃材を仕分ける用途で使われます。再利用できる資材と廃棄物を現場ですぐにより分けられ、廃棄物の処理がスムーズです。

3.農業・畜産業

グラップルは農業や畜産業の分野でも活用されています。

主に、牧草ロールや麦稈(ばっかん)ロールなどの運搬・積み込み作業で使われます。牧草ロールや麦稈ロールは、刈り取った牧草や麦わらを円筒状に圧縮して梱包したもので、家畜の飼料です。

グラップルを使えば、大きな飼料を簡単につかんで運搬でき、作業時間の短縮や効率化につながります。

4.災害時の復旧作業

災害現場でもグラップルが使われることがあります。つかむ力が強いため、倒れた樹木・土砂崩れで発生したがれき・大型のコンクリート塊などの撤去が容易です。

また、小型の油圧ショベルにグラップルを装着すれば、大型重機が入れない狭い場所や足場の悪い場所でも作業が可能です。グラップルを使うと、迅速な復旧が期待できます。

グラップルを使用する作業に必要な資格

グラップルを使うには資格が必要です。まず、油圧ショベルの操作には機体の質量に応じて以下の資格が求められます。

油圧ショベルの種類 資格
機体質量「3t未満」の油圧ショベル 小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育
機体質量「3t以上」の油圧ショベル 車両系建設機械(整地・運搬・積み込み用および掘削用)運転技能講習

さらに、グラップルを装着して木材などを扱う際には、「伐木等機械の運転の業務に係る特別教育」を受講します。グラップルに限らず、ハーベスタやプロセッサなどのアタッチメントを装着した油圧ショベルの操作に必要です。

作業者本人の安全はもちろん、現場全体の事故を防止するためにも、実際にグラップルを使い始める前に決められた資格を取得しましょう。

作業を安全に進めるには油圧ショベル選びも重要

グラップルによる作業を安全に進めるためには、グラップルを取り付ける油圧ショベルやバックホウの選定も重要です。作業内容や現場の状況に適した機種を選ばないと、思わぬ事故につながる恐れがあります。

例えば、狭い現場へ無理に大型の油圧ショベルを入れようとした結果、周囲の建物や設備を壊してしまったり、機械本体が破損したりするケースがあります。

また、グラップルが重すぎたり油圧ショベルに対してサイズが大きすぎたりすると、バランスが崩れて転倒するため重量バランスの確認も必要です。

油圧ショベルを使った作業は深刻な事故につながるため、現場に合った適切な油圧ショベルを選んで、安全かつスムーズに作業を進めましょう。

油圧ショベルの選び方

油圧ショベルを選ぶ際に押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

油圧ショベルの選び方

1つずつ解説します。

1.現場に進入できる大きさである

まずは、使う予定の油圧ショベルが作業現場へ問題なく進入できるかどうかを確認しましょう。

いくら高性能な油圧ショベルでも、現場に搬入できなければ作業を進められません。ショベルの保管場所から作業場所までの搬入経路に、以下のような通れない箇所がないかを事前にチェックしましょう。

【油圧ショベルが通れない箇所】

  • 幅が狭い道
  • 高さ制限のある場所
  • 重量制限のある橋

また、トラックで運搬する場合は、荷台のサイズや最大積載量の確認も必要です。最大積載量を超えて公道を走行すると、道路交通法違反になるため必ず確認しましょう。

なお、特に狭い場所での作業が想定される場合には、以下のような「後方超小旋回機」や「超小旋回機」と呼ばれるタイプをおすすめします。

【狭い場所におすすめのタイプ】

  • 後方超小旋回機:旋回時に後端の旋回半径が下部走行体(クローラ幅)の120%以内に収まる
  • 超小旋回機:前方・後方ともに旋回半径がクローラ幅の120%以内に収まる

小回りが利くため、狭い場所でも作業を進めやすい機種です。ただ小型の機種であっても、進入路の幅や高さ制限などによっては進入が難しい場合があるので、事前に寸法を確認しておくと安心です。

2.用途に合った掘削力や定格出力を備えている

次に確認しておきたいのは、油圧ショベルの掘削力と定格出力です。掘削力と定格出力とは、それぞれ以下のとおりです。

性能 詳細
掘削力
  • アームやバケットが土を掘る力
  • 仕様表には以下の2つが記載されている
    • アームシリンダによる「アーム掘削力」
    • バケットシリンダによる「バケット掘削力」
定格出力
  • エンジンの出力(馬力)
  • 機械が安全に発揮できる最大のパワーを指す

掘削力と定格出力が作業内容に合っていなければ、作業に必要なパワーが足りず、作業効率が落ちたり作業自体が困難になったりする恐れがあります。

例えば、固い地盤を掘ったり削ったりするには高い掘削力が必要です。一方、整地作業や軽作業であれば、それほどのパワーは求められません。作業をスムーズに進めるためにも、目的に応じた性能を持つ油圧ショベルを選びましょう。

3.作業範囲が十分である

油圧ショベルの掘削半径や掘削深さといった作業範囲も、選定時の重要なポイントです。

【掘削半径・掘削深さとは】

  • 掘削半径:アームを最大限に伸ばしたときの水平距離
  • 掘削深さ:バケットの爪先が届く最大の深さ

掘削半径が不足していると、作業中に何度も機械を移動させなければならず手間がかかります。同様に、掘削深さが足りなければ目的の深さまで掘り下げられず、別の油圧ショベルで作業する必要があります。

想定外のコストをかけないためにも、事前に作業範囲を把握し、それに見合ったスペックの油圧ショベルを選びましょう。

用途に適したグラップルや重機で安全に作業をしよう

グラップルは、林業・建設・農業・災害復旧など、幅広い場面で使える重機のアタッチメントです。ただし、適切な油圧ショベルを選定しないと、作業効率の低下や事故の原因になる場合があります。作業内容に合ったグラップルや油圧ショベルを選んで、安全かつ効率的に作業を進めましょう。

なお、グラップルを使って作業を進める場合は、購入ではなくレンタルの利用もおすすめです。

レンタルなら必要なときだけ使えるため、初期費用を抑えたうえで最適な機種を用意することが可能です。さらに、定期点検や保管はレンタル会社がおこなうので、メンテナンスの手間や保管場所の確保に悩むことがありません。

なお、産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、油圧ショベルの一種であるバックホウのレンタルをおこなっています。作業に合った機種を提案いたしますので「必要なときだけ案件に最低なバックホウを使いたい」という場合は、以下のボタンより気軽に見積もりを依頼ください。

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