建設現場などでクレーンを操作するには、法律で定められた免許・資格が必要です。クレーンには、クレーン車などの移動式クレーンと、工場内に設置されている固定式クレーンがあり、種類やつり上げ荷重によって操作に必要な資格が異なります。
本記事では、クレーン車の運転に必要な免許・資格について詳しく解説します。「クレーン車の操作に必要な資格が知りたい」「どの資格を取得すべきか迷っている」という方は、ご一読ください。
なお、産業・建設機械のレンタル会社「レント」では、クレーン車の運転に必要な技能講習や特別教育を実施しています。案件にあった資格を取得して安全に作業したいとお考えの場合は、以下のボタンからお気軽にご相談ください。
クレーン車の運転には作業に応じて免許・資格が必要
クレーン車は、建設現場などで重量物を持ち上げ、運搬するために使用される特殊な建機車両です。このようなクレーンは「移動式クレーン」と呼ばれています。
移動式に対して、工場の天井クレーンや橋形クレーンなどに設置され、移動範囲が限られる「固定式クレーン」もあります。いずれのタイプを操作する場合にも、クレーンの種類やつり上げ荷重に応じた以下の免許・資格が必要です。
▼移動式クレーン(クレーン車)の資格
免許・資格 | 5t以上 | 1t以上5t未満 | 1t未満 |
移動式クレーン運転士免許 | 〇 | 〇 | 〇 |
小型移動式クレーン運転技能講習 | 〇 | 〇 | |
移動式クレーン特別教育 | 〇 |
免許・資格 | クレーン(無線操作式含む)5t以上 | 床上運転式クレーン5t以上 | 床上操作式クレーン5t以上 | 跨線テルハ5t以上 | 5t未満 |
クレーン・デリック運転士免許(限定なし) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
クレーン運転士免許(床上運転式クレーン限定) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
床上操作式クレーン運転技能講習 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
クレーン運転業務の特別教育 | 〇 | 〇 |
クレーンに関する資格は、対応できる業務範囲によって「免許」「技能講習」「特別教育」の3段階に分かれています。免許が最も上位の資格に位置付けられ、原則として上位の資格を有していれば、下位資格の業務もおこなうことが可能です。
クレーンを使った作業では、操作に必要な資格のほかにも重要な資格があります。例えば、荷物をクレーンのフックにかけたり外したりする際には、玉掛け作業の資格、公道を走行する際は、車両の大きさに応じた運転免許証が必要です。
クレーン運転士免許は4種類
つり上げ荷重が5t以上の大型のクレーンを操作する場合、国家資格である「運転士免許」の取得が必要です。
上記の4種類のクレーン運転士免許について、それぞれの特徴や試験内容を詳しく解説します。
1.移動式クレーン運転士免許
移動式クレーン運転士免許は、すべての移動式クレーンを運転できる資格です。つり上げ荷重が5t以上の移動式クレーンを運転する場合には、この免許が必要です。なお、移動式と固定式では法律上別の機械として扱われているため、固定式クレーンの操作はできません。
移動式クレーン運転士免許の試験科目は、以下のとおりです。
項目 | 概要 |
受験資格 |
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手数料 |
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学科 |
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実技 |
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以下をはじめとした資格を持つ人は、試験科目の一部が免除されます。
【試験科目の一部が免除される例】
- 移動式クレーン運転実技教習を修了した者で、その修了した日から起算して1年以内のもの
- 鉱山においてつり上げ荷重が5t以上の移動式クレーンの運転の業務に1ヵ月以上従事した経験を有する者
上記以外にも免除対象の資格があるため、受験前に自分の保有資格が該当するか確認しておくことをおすすめします。なお、試験科目の免除を受ける際は、免許証や修了証などの資格を証明する書類の提出が必要なので、事前に準備しておきましょう。
2.クレーン・デリック運転士免許(限定なし)
すべてのクレーンとデリックを運転できる国家資格としてクレーン・デリック運転士免許(限定なし)があります。操作できるのは固定式クレーンのみで、つり上げ荷重が5t以上のクレーンとデリックを運転する際に必要な資格です。
この資格の試験は学科と実技に分かれており、詳細は以下のとおりです。
項目 | 概要 |
受験資格 |
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手数料 |
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学科 |
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実技 |
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保有している資格によっては、試験科目の一部が免除されることがあります。
【試験科目の一部が免除される例】
- 床上運転式クレーンを用いておこなうクレーン運転実技教習を修了した者で、その修了した日から起算して1年以内の者
- 鉱山においてつり上げ荷重が5t以上の床上運転式クレーンの運転の業務に1ヵ月以上従事した経験を有する者
免除制度の利用を検討されている場合は、持っている資格が対象となるか事前に確認することをおすすめします。また、免除手続きには免許証や修了証などの書類提出が必要となるため、必要な書類は早めにご準備ください。
3.クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)
クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)は、つり上げ荷重が5t以上の固定式クレーンを運転するための国家資格です。移動式クレーンを除くすべての固定式クレーンを運転できますが、デリックは対象外です。
試験科目は、以下のように定められています。
項目 | 概要 |
受験資格 |
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手数料 |
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学科 |
※デリック関係知識、デリック関係法令は除く |
実技 |
|
学科試験では、クレーン・デリック運転士免許(限定なし)の試験範囲から「デリック関係知識およびデリック関係法令」を除いた内容が出題されます。実技試験については、クレーン・デリック運転士免許(限定なし)と同じ科目です。
また、以下のような資格を持つ人は、試験科目の一部が免除されます。
【試験科目の一部が免除される例】
- クレーン・デリック運転士(クレーン限定、床上運転式クレーン限定)の学科試験に合格した者で、その学科試験が行われた日から起算して1年以内の者
上記のほかにも免除対象の資格があるので、自身が保有している資格が免除対象なのか事前に確認しておきましょう。
4.クレーン運転士免許(床上運転式クレーン限定)
工場や倉庫で使用される床上運転式クレーンを操作するには、クレーン運転士免許(床上運転式クレーン限定)が必要です。この免許があれば、床上運転式クレーンに加えて、床上操作式クレーンやつり上げ荷重5t未満のクレーンも運転できます。ただし、移動式クレーンは対象外なので注意しましょう。
なお、試験の詳細は以下のとおりです。
項目 | 概要 |
受験資格 |
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手数料 |
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学科 |
※デリック関係知識、デリック関係法令は除く |
実技 |
※床上運転式クレーンを使って実施 |
学科試験では、クレーン・デリック運転士免許(限定なし)の試験範囲からデリック関連の内容を除いた問題が出題されます。これはクレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)と同じ範囲です。
【試験科目の一部が免除される例】
- 床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者
- 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者
- 玉掛け技能講習を修了した者
上記のように、クレーン運転士免許(床上運転式クレーン限定)も、現在保有している資格によっては試験科目の免除が受けられます。
クレーン運転業務に必要な講習・教育
つり上げ荷重が5t未満のクレーン操作については、以下の技能講習や特別教育の受講が法律で義務付けられています。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.小型移動式クレーン運転技能講習
街中でよく見かけるユニック(クレーン付きトラック)などの小型クレーン車を操作するには、小型移動式クレーン運転技能講習の修了が必要です。この講習はつり上げ荷重1t以上5t未満の移動式クレーン運転業務に従事する際に求められるもので、クレーン等運転関係技能講習規程では受講内容が以下のように定められています。
項目 | 詳細 |
学科 |
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実技 |
|
参考:厚生労働省
以下の資格を保有する人は、試験科目の一部が免除されます。
【科目の一部が免除される例】
- クレーン運転士免許がある方
- デリック運転士免許がある方
- 揚貨装置運転士免許がある方
- 床上操作式クレーン運転技能講習(つり上荷重5t以上、走行横行荷と共に移動)修
- 玉掛け技能講習(つり上荷重等1t以上)を修了した者
小型移動式クレーン運転技能講習の講習を修了すれば、いわゆるユニック車(クレーン付きトラック)など、街中でよく見かける小型のクレーン車を現場で操作することが可能です。 さらに玉掛けの資格をあわせて取得すれば、クレーン操作から荷物の掛け外しまでを一人で対応できるため、業務の幅が大きく広がります。
「小型移動式クレーン運転技能講習(つり上荷重1t以上5t未満)」について詳しく見る
2.床上操作式クレーン運転技能講習
床上操作式クレーン運転技能講習を修了すると、5t以上の床上操作式クレーンだけでなく、5t未満のクレーンも操作できるようになります。
床上操作式クレーンとは、床の上でペンダントスイッチなどを使って操作し、運転者も荷の移動と共に動く方式のクレーンです。無線式クレーンや移動式クレーンの運転は対象外であり、別の資格が必要なのでご注意ください。
クレーン等運転関係技能講習規程にて定められた学科と実技は、以下のとおりです。
項目 | 詳細 |
学科 |
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実技 |
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参考:厚生労働省
以下のように、移動式クレーン運転士免許や玉掛け技能講習などを修了していると、一部科目が免除されます。
【科目の一部が免除される例】
- 移動式クレーン運転士免許を取得した者
- デリック運転士免許を取得した者
- 揚貨装置運転士免許を取得した者
- 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者
- 玉掛け技能講習を修了した者
3.移動式クレーン特別教育
つり上げ荷重1t未満の移動式クレーンを扱う業務では、移動式クレーン特別教育の受講が義務付けられています。主に、小規模な現場で使用されるミニクレーンなどが対象です。
受講内容については、クレーン取扱い業務等特別教育規程によって以下の学科科目が定められています。
項目 | 詳細 |
学科 |
|
参考:厚生労働省
移動式クレーン特別教育は、クレーン操作の基礎知識を身につけるための入門的な資格なので、将来、技能講習や免許の取得を目指すうえでの土台にもなります。
4.クレーンの運転の業務に係る特別教育
クレーンの運転の業務に係る特別教育は、工場や倉庫に設置されている小規模な天井クレーンなど、5t未満の固定式クレーンを運転するために必要な教育です。
クレーン取扱い業務等特別教育規程では、この教育で扱う学科と実技の内容を以下のように定めています。
項目 | 詳細 |
学科 |
|
実技 |
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参考:厚生労働省
小型のクレーンであっても操作を間違えると重大な事故を引き起こす可能性があるため、必要な知識と技術を身につけて安全な作業を心がけましょう。
クレーン業務に関連する資格
クレーンの操作だけでは、現場での作業をすべて完了できるわけではありません。実際の作業では、クレーン操作以外にも必要な資格があります。
順番に解説します。
1.公道の走行に必要な資格
クレーン車を現場まで運転する場合、公道を走行するには車両の大きさに応じた運転免許が必要です。クレーン操作の資格は現場でのクレーン作業のみが対象であり、車両の運転については運転免許が求められるためです。
どの運転免許が必要かは、車両の総重量や最大積載量によって決まります。
免許の種類 | 車両総重量 | 最大積載量 |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 |
中型免許 | 7.5t~11t未満 | 4.5t~6.5t未満 |
準中型免許 | 3.5t~7.5t未満 | 2t~4.5t未満 |
普通免許 | 3.5t未満 | 2t未満 |
特に2017年3月12日以降に普通免許を取得した場合は、運転できる車両の範囲が以前と異なるため、自分の免許で運転できるクレーン車のサイズを正確に把握しておきましょう。
2.玉掛け業務に必要な資格
クレーン作業では、荷物をクレーンで持ち上げる際に、フックに荷物をかけたり外したりする玉掛け業務が欠かせません。手順を間違えると、荷物のずれやワイヤーロープの破断により落下事故が発生し作業者が重傷を負う恐れがあるため、講習の修了が義務づけられています。
玉掛けに必要な資格、扱う荷物の重量によって以下のように分かれています。
資格 | つり上げ荷重 |
玉掛け技能講習 | 1t以上5t未満 |
玉掛け業務の特別教育 | 0.5t以上1t未満 |
なお、玉掛け技能講習に限り、以下の資格を保有している場合は受講科目の一部が免除されます。
【科目の一部が免除される例】
- 床上操作式クレーン運転技能講習(つり上荷重5t以上、走行横行荷と共に移動)修了者
- 小型移動式クレーン運転技能講習(つり上荷重1t以上5t未満)修了者
- クレーン運転士免許がある方
- 移動式クレーン運転士免許がある方
- デリック運転士免許がある方
- 揚貨装置運転士免許がある方
玉掛け作業は荷物の落下事故に直結する危険な作業です。必要な講習を修了して、安全なクレーン作業を心がけることが重要です。
【お問い合わせ先 レント教習センター TEL:054-265-2320】
クレーン車に適した免許や資格を取得して安全に作業しよう
クレーン車の運転や操作には、つり上げる荷物の重さや車両の種類に応じて、適切な免許や資格の取得が法律で定められています。国家資格である運転士免許から、技能講習、特別教育まで、業務の範囲や難易度に応じて段階的に資格が設定されており、上位の資格を取得すれば下位の業務もカバーできます。
また、クレーンの操作に必要な資格だけでなく、荷物の掛け外しをおこなうためには玉掛けの資格、クレーン車で公道を移動するためには車両に応じた自動車運転免許も必要です。それぞれの作業内容を正しく理解し、自身に必要な資格は何かを見極めたうえで、計画的に取得を進めていきましょう。
適切な資格を持つことは、自身の安全を守るだけでなく、周囲の作業員の安全を確保し、仕事の信頼性を高めることにもつながります。
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